日本人は塩分をとりすぎ!
腎臓の機能が落ちてきたらすべきことは「減塩」です。日本の高血圧学会でも、万人に塩分摂取量を「1日6グラム未満」を推奨しています(※1)。ただし、日本人の平均塩分摂取量は約10グラム(※2)。目標にはまったく近づけていないのが現状です。
減塩は、病気のない人にとっても必要といえます。日本人がよく食べる和食には味噌汁や焼き魚など塩分の多いメニューがたくさんあります。これは和食の唯一の欠点と言っていいかもしれません。塩分に含まれる「ナトリウム」というミネラル成分は、水を引き込む作用があるため、血液の中に過剰に存在すると血液の量が増えてしまいます。血液量が増えると血圧が上昇し血管の壁にダメージを与え、動脈硬化が進行していきます。
すると腎臓の血管もダメージを受け、「ろ過」能力も落ちていきます。今度は塩分を体の外にうまく出せなくなり、さらに血圧が上がってしまう……という負のスパイラルに陥ってしまいます。
血圧と腎臓の問題以外にも、塩分のとりすぎは胃がんリスクも上昇させます。約4万人の日本人を対象にした研究でも、食塩のとりすぎで男性の胃がんのリスクは上がり、特にいくら、うに、筋子などの「魚卵系」の食べ物はさらにリスクを上げるというデータがあります(※3)。
40歳を過ぎたら塩分を控えるよう意識しましょう。塩分に含まれるナトリウムは体に必須な成分ですが、日本人の平均摂取量を考えると「とらなすぎ」を気にする必要はないでしょう。
減塩生活を続けるコツ
減塩生活を長続きさせるコツは「塩を減らしたら、その分何かを足してあげる」という考え方です。例えば、レモン、ゆずなど酸味のある果物や、こしょう、とうがらしといった香辛料は血圧や腎臓に悪さをしないので、塩の代打選手としては非常に便利です。減塩醤油などを使用するのも有効でしょう。
※1 日本高血圧学会 日本高血圧学会減塩委員会よりの提言
※2 厚生労働省 国民健康・栄養調査 2019 年 版
※3 S Tsugane,et al. Salt and salted food intake and subsequent risk of gastric cancer among middle aged Japanese men and women. Br J Cancer. 2004 Jan 12;90(1):128 34.
(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を抜粋・編集したものです)