この3か月という短期の視点でとらえればテスラ株の暴落は市場の妥当な判断だといえます。ではこの先、長期の視点でみるとテスラ株はどうなるのでしょうか。

 テスラ株の下落を報道した記事の中で、ロイターが興味深いことを言っています。

「ロイターの調査によると、テスラのEV事業は同社の収益のほぼ全てを占めるが、同社の市場価値の4分の1にも満たない」

 この件について解説します。大企業の企業価値をどの事業が生んでいるのか、大手の調査機関や投資銀行は独自に試算結果を算出します。企業が公開する事業セグメント毎のEVITDAなどの利益指標などから企業価値を分解するのです。

 たとえば、カナダのコンビニ大手による買収提案で揺れたセブン&アイについて、JPモルガンが事業価値を独自に試算して公表しています。それによれば、セブン&アイの企業価値のうち国内コンビニ事業の価値は約2.5兆円なのに対して、米国などの海外コンビニ事業は約5.6兆円の価値を持つと算定しています。

 ロイターのテスラに対する算出についてはいつの時点か書かれてはいませんが、文脈的には株価が下落した段階のことを指しているようにとれます。

 直近のテスラの時価総額は約7773億ドル(3月12日時点)で日本円に換算すれば約114兆円です。日本のトヨタの時価総額が約43兆円なのに対して、暴落したとはいえテスラはまだトヨタの2.5倍以上の企業価値があります。

 一方で、この図式にロイターの分析をあてはめると、テスラのEV事業の事業価値は時価総額の4分の1しかないので約28兆円で、トヨタよりもかなり小さいことになります。過去最高益を上げ、世界販売台数が年間1000万台を超えるトヨタとの事業比較で捉えると、トヨタ43兆円対テスラ28兆円という数字のほうがしっくりくるものです。

 では、テスラの企業価値の大半である残り4分の3を占めるのは何でしょうか。それは現時点では収益に結びついていない未来の事業収益ということになります。