EUの狙い通り日本メーカーはEV開発で出遅れたのですが、その間隙を縫って中国の自動車メーカーが発展してしまったのです。安くて高性能な中国製EVの欧州向け輸出が増加しています。
このままでは新しい競争相手にVWやメルセデス、ルノーといったヨーロッパ企業がやられてしまうという恐れから、中国政府による不当な補助金を名目にヨーロッパ域内でのEV政策を見直そうという動きが強まっています。
ではこれまでEVに世界で一番力を入れてきた中国はというと、不動産バブルの崩壊から始まった経済停滞に苦しんでいます。国内の消費スピードは明確に減速していて、中国国内では自動車も販売不振です。
テスラの主力であるEVの2024年世界販売台数は前年比で横ばいにとどまりました。欧州と中国の問題が解決していないという政治情勢を踏まえるとテスラの販売不振は今年も続きそうです。これが2つめの問題です。
一方で下落しているのはテスラ株だけではありません。DeepSeekショックを受けて半導体大手のエヌビディア株が調整に入ったのと同時に、AIが低コストで開発できそうだという見込みからマイクロソフト、グーグルなどIT大手株も大幅な株価調整に入っています。この調整にテスラ株が巻き込まれているというのが3番目の問題です。
さらにはトランプ関税の影響がこれから世界経済を襲います。中でも厳しいのが、実はアメリカ国内でのインフレ再燃です。トランプ関税はアメリカの製造業にはプラスに働くのですが、高い関税のツケは割高な商品を買うことになるアメリカの消費者が払うことになります。
アメリカファーストといってもトランプ大統領はあくまで共和党支持者ファーストです。世界経済全体からみれば明らかにマイナスになる独自関税政策を推し進める以上、アメリカ経済もマイナスの影響を受けます。
アメリカはそもそもGDPの約7割を個人消費が占める国です。そんなアメリカで消費者の購買景況に敏感に反応するS&P500小売株指数が今年2月の高値からわずか1カ月で約15%も下落しています。ウォルマートやコストコといった小売業では、アメリカにおける消費者の節約志向を懸念する声があがっています。
インフレが再燃して個人消費が抑えられれば当然、EVの販売には逆風が吹きます。これが4番目の問題です。