当然ながら、ロボタクシーには既存のタクシー会社からのロビイングといった抵抗活動が世界中で活発になっています。日本では海外企業のモビリティビジネスでのイノベーションは徹底的に抑え込まれていて、ロボタクシーどころかそれ以前のライドシェアサービスですら実現できていません。

 実は、アメリカでもロボタクシーに反対する勢力は大きいのですが、トランプ政権はその反対意見を抑えはじめています。テキサス州のグレッグ・アボット知事はトランプ大統領と同じ共和党の政治家です。テキサス州では市の単位でロボタクシーを規制する動きがあったのですが、それを州知事の権限で無効にする政令を出しました。

 これによって、テスラのロボタクシー事業は政治的な壁が、少なくともテキサス州では、取り除かれました。6月にテキサス州オースティン市でロボタクシー事業が始まった場合、その実績いかんでは、テスラの目論見どおりに来年には全米でのロボタクシーの展開が始まるかもしれません。そうなればテスラ株の価値はふたたび注目に値する展開になることでしょう。

 ただし、この件についても実は別の問題があります。強いライバルが存在するのです。

 今、未来のモビリティ市場では、EVかガソリン車かそれとも水素かといった話は急速に重要ではなくなっています。それよりも重要なのがソフトウェアをダウンロードすることで車の性能が上がるSDV技術と、その中核となるアプリである自動運転技術です。

 このSDVと自動運転の技術では、日本車だけでなくヨーロッパ勢もGMなど既存のアメリカ勢も周回遅れになっています。今、世界で最先端に近いのがベンチャー企業を除けば4強です。それがグーグルのウェイモ、テスラ、中国のBYDと百度(バイドゥ)の4社になります。

 このうち自動運転で先行しているのがウェイモと百度で、ウェイモはアメリカのカルフォルニア州やテキサス州で、百度は中国の大都市でそれぞれ無人タクシーの営業運転をすでに始めています。