米国の支援にもかかわらず、シラー・リソーシズなどの西側企業は中国との鉱物競争で課題に直面 米国の支援にもかかわらず、シラー・リソーシズなどの西側企業は中国との鉱物競争で課題に直面 Photo:Annie Flanagan for WSJ

 モザンビークにある自社のグラファイト鉱山を2017年に初めて訪れた豪鉱業会社シラー・リソーシズのショーン・バーナー最高経営責任者(CEO)は、勝算があると確信した。

 バーナー氏は重要鉱物の世界供給で優位に立つ中国に対抗しようとしていた。重要鉱物は現在、電気自動車(EV)から潜水艦の船体まであらゆるものに使われている。

 米政府から1億ドル(約149億円)余りの融資を受け、シラーはモザンビークに鉱山を開き、米国初となるグラファイト加工工場をルイジアナ州に建設した。米EVメーカーのテスラと供給契約も結んだ。テスラはこれまで中国から車載バッテリー用グラファイトを購入していた。

 それから事態は思うように進まなくなった。

 バッテリーグレードのグラファイトは世界供給量の90%超を中国が占める。同国が生産量を大幅に増やして市場にあふれさせ、値崩れが起きたことで、シラーは採算が取れなくなった。昨年5月、当時のバイデン米政権は中国産グラファイトの使用に対する罰則導入を延期した。モザンビークでは、シラーの鉱山周辺から締め出された農業従事者が抗議活動を行い、採掘が中断した。

 シラーのルイジアナ工場は1年前から稼働しているものの、まだ商業ベースの販売にこぎつけていない。同社の株価は2023年初めの水準を約90%下回る。

 シラーが直面している課題に目を向けると、世界の重要鉱物競争で中国が勝ち続けている理由が見えてくる。