森の中の親子グマPhoto:PIXTA

市街地にクマが大量出没するようになり、大きな話題となっている昨今。有害駆除されるクマも多いものの、山では自然死体がほとんど見つからない、という事実をご存じだろうか。クマに9回襲われて生還した経験のある研究家が、知られざる生態を解説する。※本稿は、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦『家に帰ったらクマがいた』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

なぜクマの自然死体は
山で見つからないのか?

 山野でクマの自然死体が見つからないことは研究者の間でも有名で、修士論文にしたいと私の所に訪ねて来た学生が2人いる。私がクマの自然死体を見たのは、55年間でたった2回だけだ。

 1980年9月19日、私がまだ秋田県自然保護課に勤務していた頃だ。クマの追跡作業中に秋田市大平野田の林道の橋を渡ると、川下の中洲の柳に黒い塊が引っ掛かっているのを見つけた。皮の所々が破けて白い脂肪、ふやけた赤肉が露出している。

 私は死体を回収しようと、増水した川べりに降りたが、岸辺が深みになっていて中洲まで行けなかった。時期的にみて、そのクマは岸辺にあったクリの木の上で採食中に射殺され流され、回収されなかったのだろう。

 だから自然死とも言い切れない。

 秋田県によるクマの有害駆除個体等から繁殖生理学、寄生虫学的調査を実施した多数のクマのうち、ただ1頭、自然死したものは東成瀬村の栗駒山で回収されたもので、火山性の有毒ガスによる中毒死と推定されている。

 なぜ野生のクマの自然死体は発見されないのだろう。理由は正直いまもわからないのだが、自然死する前に有害駆除されている、とする考え方がある。