老舗の中小企業がインドで「ほしいも」を作るワケ川崎陸送の樋口恵一社長 写真:カーゴニュース

人口減少で中長期的に国内市場の拡大が見込めない中、海外展開は中小企業にとっても成長戦略のひとつとなる。ただ、地政学リスクやカントリーリスク、円安などハードルは高くなっており、人材、ネットワークなど制約もある。100周年を迎えた川崎陸送(本社・東京都港区、樋口恵一社長)は、初の海外事業として、成長市場でありながらビジネスの難易度も高いインドで国内物流に参入。同社の事例から、中小物流会社の海外展開のヒントを読み解く。(カーゴニュース編集部)

*本記事はカーゴニュースからの転載です

創業100年の中小物流会社が
思い切ってインドに進出

「中小企業としての限界、制約条件がある中でできることと、受け入れられないリスクを斟酌しながら取り組んできた。中小企業ではヒト・モノ・カネ・ノウハウのすべてが限られている。倉庫業は施設を50年使用することを想定した、長期スパンのビジネスであり、当社は上場していないため、時間をかけて事業に取り組める。インド進出に挑戦できたのは、『石の上にも20年』というスタンスが許容される中小倉庫業だからだとも言える」――川崎陸送の樋口恵一社長はこう説明する。

 川崎陸送は、日本の人口が減少し、国内物流の総需要が減っていく危機感から海外展開を検討。ターゲットをインドに絞り始めたのは、樋口氏が最初にインドを訪問した2014年だった。中国との比較において、インドの人口ピラミッド図は高齢者人口比率が小さく、生産年齢人口、幼少人口ともに豊富な「見事なタージマハール型だった」(樋口氏)。生産年齢人口がピークを迎え、インドの経済成長がブレークするのは2030年ともいわれており、将来的にも有望な市場ととらえた。

 進出の制約とリスクを見極めるにあたって、(1)人口減少(2)リスク(3)社内人材(4)人脈・ネットワーク(5)日本からの距離(6)競争・ブルーオーシャン(7)自社の強み(8)現地化(9)情報の入手(10)補助金(11)親日度など、あらゆる観点から徹底調査した。