国内生産や輸出に有利なように見える?
消費税還付金は“輸出補助金”なのか
日本の消費税は、どのような構造になっているか。そしてこの構造は、トランプ氏が言うような問題を抱えているだろうか?
まず、日本の消費税では、輸入に消費税を課している。確かに、これは関税のように見える。そして、輸入を日本国内生産に比べて不利にしているように見える。アメリカの売上税は消費者が購入した段階で、国内生産か輸入かに関わりなくかかるからだ。
また、日本の消費税では輸出は免税としている。ところが、部品の生産などについては消費税が課されている。そこでこれを輸出の段階で還付する。
これは、輸出を日本国内での販売より有利にし、輸出を奨励する輸出補助金のように思える。
消費税還付金は膨大な額だ。トランプ大統領が、消費税還付金を「非関税障壁」だとして批判するのも無理はない。
輸入車は不利にならず輸出も同じ税率
アメリカの売上税が時代遅れ
しかし、実は、そうではないのだ。
例えば自動車について言えば、次の通りだ(自動車でなくともこうなるが、イメージを描きやすいように、自動車の場合を例にとって説明する)。
日本では輸入車に消費税がかけられるが、国内生産車にも同率の消費税がかかるので、輸入車と国内生産者の競争条件に影響はない。輸入車が税関を出るときと、国内生産車が工場を出るときには、同率の課税がされているのだ。
課税前の価格が同じなら、課税後の価格も同じだ。だから、両者の間の競争力が、税のない場合に同じであれば、税がかかっても同じだ。輸入車が不利になることはない。
輸出についてはどうか?
日本企業が輸出する場合、日本では課税されないが、輸出先国で課税される。輸出先国で例えば10%の課税が行われれば、国内販売車と輸出車で同じ税率になる。だから、特別に輸出が優遇されるわけではない。これは輸出奨励策にはなっていないのだ。
輸出先国がアメリカの場合、アメリカ国内で消費者が購入したときに売上税が課される。税率は州や市で異なるが、ニューヨークで8.875%だ。一般に7~8%程度といわれる。
これは日本の消費税率10%より低いから、その差を関税で埋めるとすれば、2~3%程度の関税率で十分だ。トランプ政権が検討している自動車に一律25%程度の関税を課すことに比べれば、税率はずっと低い。
なお、売上税は、各取引段階で二重三重に累積する可能性がある。それを考えると、実際の税率はもっと高い可能性もある。それを推計するのはアメリカ側の責任だが、容易ではないだろう。
以上で述べたことは、アメリカの売上税が時代遅れであることを示すものだ。ヨーロッパの付加価値税や日本の消費税は、アメリカの売上税より進んだ制度なのだ。税制改革が必要なのはアメリカの側だ。