
米トランプ大統領が米国への輸入車に25%もの関税を検討していることが明らかになった。トランプ氏はドイツ車の輸入が多いことに不満を示しているが、「右ハンドル仕様、車検という日本独自の検査制度が米国車の参入を妨げている」として、日本車に対する追加関税を発表する可能性は高いだろう。自動車輸出で景気を支えている日本としては、一大事である。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
欧州株が上昇しているのは
ウクライナ停戦後の復興需要への期待?
トランプ大統領が、強引ともいえる手法で国別、品目別に関税を発動している。「米国の貿易赤字は経済と国家安全保障を脅かしている」として、全ての国を対象に相互関税を導入する方針のようだ。
トランプ氏や主要閣僚は、他国の規制や税制が米国の貿易赤字の一因とも指摘。特に、欧州の付加価値税(VAT。日本の消費税に相当)を米国企業に対して不公平な仕組みだと批判している。
そうした中、2月に入ってドイツをはじめ欧州株が上昇している。主要投資家の心理は、トランプ政権の関税政策の負の影響よりも、ウクライナ戦争の停戦やその後の復興需要に期待しているようだ。
ただ、不透明な要素は多く、先行きは慎重にみるべきだろう。また、経済専門家の間では、「トランプ政策自体が世界経済の重要なリスク要因」との指摘が多い。トランプ氏の主張する減税、不法移民の送還、規制緩和などを推進するとインフレになりやすい。さらに、減税の財源を考えると、国債の増発で金利は上昇しやすくなるはずだ。
トランプ氏は原油価格を下げて、インフレを起こさずに米国の経済活動を拡大するとしているが、うまくいくのだろうか。米国を製造大国にして輸出を増やす方針だが、同氏はどちらかというとドル安傾向を好むとしている。にもかかわらず、トランプ氏は基軸通貨ドルの安定を重視するという。
トランプ氏のアイデアには矛盾がある。今後、米国のインフレが高進するようだと、トランプ氏のマニフェストを実現することは難しい。米国経済が失速すると、わが国経済はかなり厳しい状況に陥ることが懸念される。