2023年度の外国人留学生数

コロナ禍でいったん落ち込んだ外国人留学生数が、2023年度に急回復している。22年度の23万1146人から23年度の27万9274人へと20.8%増となった。
このペースが続けば、コロナ禍前のピークであった19年の31万2214人に達するのも時間の問題だ。今後、外国人留学生数がどのように推移するのかを見通す上で、コロナ前の時期の傾向を振り返る必要がある。
外国人留学生といっても、その内訳は日本語教育機関への留学生から大学院への留学生まで幅広い。そのため、コロナ前の11年の16万3697人から19年の31万2214人に至る91%増の変化を教育課程別の人数に分解してみる。すると日本語教育機関への留学生は2万5622人から8万3811人へと227%、専修学校(専門課程)への留学生は2万5463人から7万8844人へと210%とそれぞれ大幅な増加だった。
一方、大学(学部等)への留学生は7万1244人から9万2952人への30%増、大学院への留学生は3万9749人から5万3089人への34%増と、限定的な増加にとどまっていた。
このような非対称性が発生した背景には、それぞれの教育機関に対する文部科学省の規制の強さの違いがあったことは想像に難くない。例えば、日本語教育機関に関しては、23年5月に成立した日本語教育機関認定法によって初めて文部科学省による認定が行われることとなった。一方で大学や大学院は定員や授業料が強く規制されているため、潜在的には急増していた外国人留学生からの日本への留学熱に十分に応え切れなかった可能性がある。
今後、外国人留学生数はコロナ前の水準を超えて伸び続けることが予想される。また、さまざまな国籍の学生が日本人学生と共に学ぶというキャンパスの国際化は、多くの大学にとっての目標だ。この目標を達成するためには、例えば、留学生の授業料を高く設定することにより、受け入れ環境をさらに整備するといったことも考えられる。今後の戦略を正面から議論することは避けて通れない。
(東京大学公共政策大学院 教授 川口大司)