意外と知らない神宮球場の光景

――現在、新球場は2032年に完成する予定です。まだ時間はありますが、それまでに現神宮球場の「ここを見ておけ!」というのがあったら教えていただけますか。

長谷川:新球場がどのようなものになるのか、現時点ではまだ決まっていないので、「ありとあらゆるところを見てほしい」と思います。個人的には球場外周、朱色のアーケードが大好きですね。あと、意外と知られていないかもしれませんが、神宮の「宮」の字に注目いただくとおもしろい発見があるかもしれません。

 失われることが決まっている以上、神宮球場すべてのものを目に焼き付けておきたいというのが私の思いです。書籍の巻末に現在の神宮球場の四季の写真を掲載していますが、雲、雷、青天、桜など、どこを切り取っても慣れ親しんだ「神宮球場」なんです。座席のアップでさえも神宮です。本の前半に掲載した歴史的な貴重な写真の数々と巻末のなにげない現在の神宮を切り取った神宮、その対比がすごく気に入っています。

――長谷川さんが推す、神宮のオススメスポットがあれば教えてください。

長谷川:どこの入り口でも構わないですが、球場コンコースからスロープを上がり、目の前にまばゆいばかりのグラウンドが現れる瞬間が大好きです。「これから野球が始まるんだ」「自分はスタジアムにいるんだ」という内なる興奮でワクワクします。

――最後に、今年のヤクルトについて、展望を教えてください!

長谷川:書籍内でも触れましたが、2025年3月現在神宮球場で最も勝利を挙げているのは松岡弘と石川雅規の91勝。最もホームランを打っているのは167本の池山隆寛、次いで166本の山田哲人です。今年は、石川雅規投手の「神宮最多勝利投手」、山田哲人選手の「神宮球場歴代最多ホームラン打者」の達成が期待されます。ぜひ、その勇姿を見届けたいと思っています!

長谷川 晶一(はせがわ・しょういち)
1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。2005年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会する、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家R」。著書に『生と性が交錯する街 新宿二丁目』(角川新書)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間 完全版』(双葉文庫)、『中野ブロードウェイ物語』(亜紀書房)、『名将前夜生涯一監督・野村克也の原点』(KADOKAWA)ほか多数。
広岡達朗「神宮球場は神聖な道場です」100周年目前の神宮球場、再開発すべき?やめるべき?『神宮球場100年物語』
長谷川 晶一 (著)
定価2,420円
(朝日新聞出版)

AERA dot.より転載