
不動産経済研究所によると、2024年に新規供給された首都圏の億ションは3648戸と、バブル期を大幅に超えた。しかし、東京23区における新築マンションの平均価格は1億1181万円にのぼり、現在も高額物件の供給が続いている。こんなにも住宅が入手困難となっているのはなぜなのか。そのウラには、都市開発事業の構造的な問題が横たわっていた――。※本稿は、野澤千絵『2030-2040年 日本の土地と住宅』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。
タワマン絡みの再開発は
高コストになりがち
最近、再開発などでタワーマンションの建設があちらこちらで行われ、住宅の「量」はかなり増えているはずなのに、なぜ、ここまで住宅価格が高くなっているのかと疑問に思われる方も多いでしょう(編集部注:2023年時点で、東京23区の新築マンション価格の中央値は8200万円。10年前と比べると1.6倍の数値となっている。その他、神奈川で1.5倍、埼玉・千葉で1.3倍の変動が見られた)。
高度経済成長期以降、都市計画では、駅前や中心市街地などの利便性が高いエリアや都市の拠点エリアでは、土地をまとめて燃えにくい建物として防災性を向上させ、そこに交通・商業・業務・行政・文化・居住など必要な機能を入れる「アーバンリニューアル」(編集部注:都市の再生や再開発のこと)が不可欠だと根強く考えられてきました。
そのための手法の1つが都市再開発法に基づく市街地再開発事業です。特に、近年は、タワーマンション建設が主目的ともいえる再開発も多く見られるようになりました。
市街地再開発事業は、細分化された複数の地権者の土地をまとめ、基本的にはそれまでよりも巨大な建物を建て、新たに生み出された床(保留床という)の売却費や補助金などで全体の事業費を賄う仕組みとなっています。
市街地再開発事業では、保留床を多く生み出すことで事業費を捻出するために建物が「高く大きく」なりがちなこと、地権者等への補償費や、土地整備費として老朽ビルなどの解体費が事業費に加わってくることなど、再開発という事業手法自体に全体の事業費を押し上げる要因があるのです。
つまり、駅前などの地価が高く、多くのビルが建ち並んだエリアの場合、再開発を進めるための「前提条件の整理」にかかる多大な費用が上乗せされるため、どうしても高コストになる構造なのです。
新築マンション価格の高騰を抑えるためには、こうした現行の市街地再開発が抱える構造的な問題も検証しなくてはいけません。
建物が陳腐化・老朽化しても
次の再開発は極めて難しい
再開発は、時代のニーズに合わせた都市空間へとつくり替えていくためにはこれからも必要不可欠です。しかしながら、昨今の再開発ラッシュを目にするにつけ、非常に懸念していることがあります。