明治神宮外苑Photo:123RF

東京都心のオアシス、明治神宮外苑。その再開発計画が今、暗礁に乗り上げている。都民を長年癒やしてきた少なくない木々を犠牲に、スポーツ施設の刷新のみならず、超高層ビルの建設計画が進んでいることが浮上したからだ。都民不在でひそかに進められてきた神宮外苑再開発のウラ側に迫る、短期集中連載『都心開発、最後のフロンティア 明治神宮外苑再開発のウラ側』(全3回)の#2では、全貌が見えてきた神宮外苑再開発の要、「空中権」売買による高層ビル化で生み出される価値を、独自に試算する。(ダイヤモンド編集部 大根田康介)

建物の高さ規制の緩和で
高層ビル化と空中権売買が可能に

 今年5月19日、三井不動産は、明治神宮、日本スポーツ振興センター(JSC)、伊藤忠商事らと進めている明治神宮外苑地区の再開発に関するリリースを発表した。だが、本連載第1回(『神宮外苑再開発が暗礁に乗り上げた裏事情、森元首相に長生きを誓わせた「極秘計画」の顛末』)で触れたように、この計画が「神宮外苑の文化的景観が守られない」といった一部住民の反感を買っている。

 もともと神宮外苑地区は東京都心で再開発できる最後の一等地と目されていたが、景観維持のため建築物の高さ規制が設けられており、再開発できなかった。そこへ、ラグビーワールドカップや東京五輪などのスポーツ大会を大義名分にした国立競技場の建て替え案が浮上する。と同時に、東京都や政治家、明治神宮、三井不動産などを巻き込み、詳細なプロセスが不透明なまま高さ規制が緩和されるなど水面下でプロジェクトが進行。高層ビルの建設と「空中権」売買による資金調達が可能になった。

 空中権の売買は「容積率移転取引」ともいう。再開発地区のある建物を建て替える際、その建物を高層化しない代わりに余った容積を売却し、同じ再開発地区内のデベロッパーが購入してビルに容積を移転することで建設費を賄う方法だ。今回の場合、明治神宮が所有する明治神宮野球場(神宮球場)やJSCが所有する秩父宮ラグビー場などの余った容積を三井不動産や伊藤忠商事のビルに移転することで、神宮球場と秩父宮ラグビー場の建て替え資金を得られる。

 では一体、空中権売買で生まれる価値(移転容積評価額)はどのくらいが見込まれるのか。これまで明らかにされてこなかったが、ダイヤモンド編集部が入手した容積移転に関する資料を基に独自試算したところ、過去の空中権売買とは比較にならない巨額の金が動くことが判明。次ページでは、その“明細”を掲載しよう。