レシピ多すぎ、コスパ悪すぎ、献立ムズすぎ、皿洗い嫌すぎ……! 初心者だろうと、日々料理を作る人だろうと、平等に立ちはだかる自炊の壁。時間も余裕もないのに、どうすれば自炊を続けられるのか?「料理を勝手に難しくしているのは自分です」と語るのは、料理を体得したミニマリスト・佐々木典士氏と、自炊料理家の山口祐加氏。新刊『自炊の壁』では、初心者がレシピなしで料理できるようになるステップ100を完全網羅している。「気持ちが楽になった」「自分のための本だ!!」と話題が広がる本書から、内容の一部を紹介する。

【料理に初挑戦】「ハンバーグ」を作るのはセンスがない…その残念な理由とは?Photo: Adobe Stock

始め方の壁。ハンバーグ問題!

山口祐加(以下、山口) 料理を始めるのには、やっぱり簡単なものからスタートするのがいいと思います。他のジャンルでも、初心者は簡単なものから始めますよね。

佐々木典士(以下、佐々木) でも、これから料理を勉強しようと思う人が、勇んでレシピ本で開くページが、ハンバーグだったりオムライスだったりするんですよね。同棲や結婚したら、初日に作りそうなものというか(笑)。

山口 本当にそうなんです! 私はそのことがすごく不思議なんですけど、その不思議さがずっと解消しないままの状況で。ハンバーグやオムライスは確かに美味しくてみんな大好きなので、作るモチベーションにはなります。ただ難しいし、手間がかかるので、それがいいスタートになるとは思えないんですよね。私はこのことを「ハンバーグ問題」と呼んでいます。

佐々木 ハンバーグ問題(笑)。ぼくも挫折した経験があります。オレンジページが『基本の○○』シリーズというのを出していて、学生の頃それを集めていたんです。『基本の洋食』ならオムライスやハンバーグが当然載っていて、そういった「有名な料理」をまず作れるようになることが「基本」だと思い込んでいた。でもその「基本」のはずのレシピも覚えられないままで、再現できたとしても、うまくなった感覚があまりないという。

山口 私もハンバーグを作るんだったら、いまだにレシピを見たりしますよ。

佐々木 料理家の山口さんですらそうだというのは、安心するかも。

なぜ、ハンバーグを推奨しないのか?

山口 ハンバーグは初めて料理する人が挑戦するには、失敗する要素が多すぎて挫折する道しか見えないんですよ。

まず肉だねを作るのにいろんな素材が必要だし、肉の水分や卵の大きさの違いによって、柔らかくなりすぎて成形できなかったりします。生焼け問題も起こるし、反対に焼きすぎて肉汁どころじゃなくなる場合もある。

肉だねを作ったボウルには脂がたくさん付くから、洗い物も面倒。作り終わった後に微妙に余る素材が多くて、無駄にしてしまう罪悪感も感じる。ナツメグは臭み消し、パン粉は肉汁を吸ってくれるのでジューシーになるんですけど、なぜそれを入れるかの説明もあまりされないし。

佐々木 もっとシンプルなハンバーグのレシピもあるけれど、肉を練って成形する工程が特殊であることには変わりはないですね。他の料理に応用しづらくて、まず覚えたい基本的な作業ではないというか。

山口 あとはハンバーグは1人分を作るにはまったく向いていない料理で、ミニマムで2人分なんじゃないかと思います。冷凍もできますが普通のハンバーグはできたてが美味しいので、ひとり暮らしでは練習しにくいんですよね。

佐々木 ハンバーグ問題は、ハンバーグだけに言えることじゃなくて、工程が複雑だったり、失敗しやすい料理なのに、初心者がいきなりそこから始めてしまう問題の総称として使えそうですね。オムライスだってそうでしょうし。初心者が料理を始めるには、ハンバーグ問題の反対をいけばいいように思います。必要な材料も工程も特殊ではなく応用が利くもの、片付けも面倒ではないものから料理をスタートするのがいいですね。

(本稿は、書籍『自炊の壁』を一部抜粋・編集したものです。本書では、料理のハードルを乗り越える100の解決策を紹介しています)

佐々木典士(ささき・ふみお)
作家/編集者
1979年生まれ。香川県出身。雑誌「BOMB!」「STUDIO VOICE」、写真集や書籍の編集者を経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに「Minimal&Ism」を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は26か国語に翻訳され80万部以上のベストセラーに。『ぼくたちは習慣で、できている。』は12か国語へ翻訳、累計20万部突破。両書とも、増補文庫版がちくま文庫より発売。

山口祐加(やまぐち・ゆか)
自炊料理家
1992年生まれ。東京都出身。出版社、食のPR会社を経て独立。7歳の頃、共働きで多忙な母から「今晩の料理を作らないと、ご飯がない」と冗談で言われたのを真に受けてうどんを作ったことをきっかけに、自炊の喜びに目覚める。現在は料理初心者に向けた料理教室「自炊レッスン」や執筆業、音声配信などを行う。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』(晶文社)、『軽めし 今日はなんだか軽く食べたい気分』(ダイヤモンド社)など。