どうすれば、自炊をラクに続けられるのか?
買い物、レシピ、調理、献立、片付け……。初心者だろうと、日々料理を作る人だろうと、平等に立ちはだかる壁。「料理を勝手に難しくしているのは自分です」と語るのは、料理を体得したミニマリスト・佐々木典士氏と、自炊料理家の山口祐加氏。新刊『自炊の壁』では、初心者がレシピなしで料理できるようになるステップを完全網羅している。自炊に悩むすべての人に向け、本書の内容の一部を紹介する。

味付けの「三種の神器」とは?
佐々木典士(以下、佐々木)(自炊料理家の)山口さんは「塩+油」「しょうゆ+みりん」「酢+塩+油」という本当に基本的な味付けを紹介されていますね。
山口祐加(以下、山口)これさえ覚えれば、大抵のものは美味しくなって、冷蔵庫にあるものでご飯が作れるようになるという味の組み合わせです。
「塩+油」は味付けの基本になる塩分をととのえたうえで、油で旨味やリッチ感を足す。たとえば、ねぎ玉子炒め、ささみときゅうりのごま油あえ。炒め物、和え物でも間違いない組み合わせです。
佐々木 「油は調味料」ともよく言われますね。
山口 オリーブオイルとごま油は風味が強いので、ほぼ調味料として捉えてますね。
それから「しょうゆ+みりん」は、日本人のDNAに訴えかけるような甘辛味。煮物、丼物、きんぴら、多くの料理の基本的な味付けがこれですね。嫌いな人はいないんじゃないかな。
「酢+塩+油」はサラダのドレッシングの基本の味付けですが、酸辣湯(スーラータン)みたいなスープにもできます。「酢+塩+砂糖」で甘味を加えたものは、酢の物の定番。酸味があると味に奥行きが出るんですよね。
佐々木 調味料を2:1:1とか、いろんな比率や黄金比として味付けは紹介されますけど、それも全然覚えられなくて……。そのもっと手前で「塩味or甘辛味の二択、今日はどっちでいく?」みたいなほうが方向性が立てやすかったです。「迷ったら調味料は同量」というざっくりした方針のほうが重宝したり。
山口 これ以外にもいろんな味付けやたれは紹介されますが、定番の味に飽きてきたときの中級者向けかなと思います。まずはシンプルな味の組み合わせがいくつかあれば応用が利きます。どんな食材でも、このどれかの味付けで適当に料理を作ることはできますから。
1「塩(塩分がある調味料)+油」=味付けの基本
・焼き野菜
・冷やしトマト
王道中の王道。塩味だけでも料理だが、油を足すとよりリッチに
2「しょうゆ+みりん」=みんなが好きな甘辛味
・鶏肉の照り焼き
・豚のしょうが焼き
・肉じゃが
ご飯のおかずになるような甘辛味は大抵これ。ゴールデンコンビ!!
3「酢+塩+油または酢+塩+砂糖」=さっぱり美味しい
・サラダのドレッシング
・酢の物
・玉ねぎの甘酢漬け
酢+塩+油は、ドレッシングの基本。酢+塩+砂糖は、酢の物の基本
(本稿は、書籍『自炊の壁』を一部抜粋・編集したものです。本書では、料理のハードルを乗り越える100の解決策を紹介しています)
作家/編集者
1979年生まれ。香川県出身。雑誌「BOMB!」「STUDIO VOICE」、写真集や書籍の編集者を経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに「Minimal&Ism」を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』は26か国語に翻訳され80万部以上のベストセラーに。『ぼくたちは習慣で、できている。』は12か国語へ翻訳、累計20万部突破。両書とも、増補文庫版がちくま文庫より発売。
山口祐加(やまぐち・ゆか)
自炊料理家
1992年生まれ。東京都出身。出版社、食のPR会社を経て独立。7歳の頃、共働きで多忙な母から「今晩の料理を作らないと、ご飯がない」と冗談で言われたのを真に受けてうどんを作ったことをきっかけに、自炊の喜びに目覚める。現在は料理初心者に向けた料理教室「自炊レッスン」や執筆業、音声配信などを行う。著書に『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』(晶文社)、『軽めし 今日はなんだか軽く食べたい気分』(ダイヤモンド社)など。