アベノミクスによる株価の上昇に伴い、わが国の景況感は、まちがいなく上向いている。しかし景気の上昇を確実にするためには、個人が消費を増やし、企業が設備投資を拡大し、ベンチャー企業が次々と生まれてくることが必要である。今回は、その中で、ベンチャーについて考えてみたい。わが国のベンチャー、すなわち起業活動は一般に低調であると言われて久しいものがある。では、どうすれば起業活動が活性化するのだろうか。「レファレンス」2013年1月号に掲載された岡田悟氏の論稿を参考に論点を整理してみた。
起業活動はアメリカの半分以下、
ベンチャー投資額はアメリカの4分の1以下
まず起業活動の現状を見てみよう。ベンチャー企業の動向については開業率や廃業率を調べるのが一般的だが、国際比較を行うためには、1997年にアメリカと英国の研究者が中心になって組織されたグローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)調査が分かりやすい。
GEM調査の項目に起業活動率(Total Entrepreneurship Activity:TEA)があるが、これは「起業の準備を始めている人+創業後3.5年未満の企業を経営している人」が18~64才人口100人当たり何人いるかで定義され、各国の起業活動の活発さを測る指標となっている。そこで過去3年(2009年~2011年)のTEAの平均値をみると(次表)、わが国はアメリカの半分以下のレベルであり先進国中、最低水準となっている。
ベンチャーの効用としては、一般に新規雇用やイノベーション、経済成長にプラスの影響をもたらすことがあげられるが、そうであれば、わが国はTEAのレベルをもっと嵩上げする必要があろう。