「そこそこで終わる人」と「大成功をつかむ人」の決定的な違い『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営について解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第22回では、「楽して儲ける」を具現化して上場を果たしたグローバル企業について解説する。

「特注Tシャツ」の成功がメガトン級のインパクトに

 格闘技イベント「豪腕」の会見において、自社で作ったTシャツを人気タレント・中原綾名に着用させる事に成功した主人公・花岡拳。中原の体型にジャストフィットするように作った特注のTシャツを着て喜ぶ中原の姿は、翌日のスポーツ紙の一面を飾った。幹部社員の日高功は「メガトン級のインパクト」と成功を喜ぶ。

 中原の一件で、大手広告代理店らが花岡たちの技術を評価した。その結果、人気バンドや大物アーティストなどからの発注も相次ぎ、社内はようやく活気を取り戻す。しかし花岡は「これから顧客となるタレントは格が違う。品質チェックも相当厳しい」として、社員らに気を引き締めるように伝える。

 その後花岡は、豪腕のグッズ販売を取り仕切る一ツ橋物産・井川泰子から受けていた理不尽な取引の掛け率を修正することにも成功し、出資者である塚原為ノ介のもとを訪れるのだった。

 花岡はこれまでの経緯を説明し、「年商100億円のメーカーに育てるためにまずは勉強をして…」と語るが、塚原は花岡の言葉をさえぎり、「勉強なんて君らしくない」「何度もいってるが商売はカンとセンス」と断言するのだった。

 日本人は真面目で道徳心が強いから、血のにじむ努力と苦労の末でなければ成功は得られないと考えがちだ。

 だが、そこで得られるのは「そこそこの成功」である。大きな成功をつかむのであれば、カンとセンスでひらめいたアイデアを具現化し、独自のビジネスモデルをつくり、さらにいち早くその分野を独占すること――すなわち「楽して儲ける」ことが大事だと語る。

非常識な発想を具現化して上場したスタートアップ

漫画マネーの拳 3巻P95『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 とはいえ、塚原の言う「楽して儲ける」とは、「怠けて儲ける」という意味ではない。常にビジネスの常識を疑い、仮説やひらめきを即座にかたちにする行動力で、市場を切りひらくことが重要だと言っているのだ。

 そんな一例として浮かんだのは、民泊サービスのAirbnbだ。国ごとに業法での規制があるという背景もあるが、かつて宿泊施設といえば「ホテル」や「旅館」という、ある種の固定観念が支配していた。

 そこに「個人の空き部屋を貸し出す」という当時では非常識とも言える発想を持ち込んで具現化し、プラットフォームをいち早く作り上げたことで市場を独占。ナスダックでの上場を果たしたわけだ。既存の枠にとらわれないカンとセンスという、塚原の言葉を裏付ける成功例とも言える。

 塚原は花岡に向けて、商売における究極の理想型は「街のたばこ屋」だと語る。次回、花岡はその言葉の意味を探し求めることになる。

漫画マネーの拳 3巻P96『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 3巻P97『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク