いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

哲学者のように生きた皇帝
マルクス・アウレリウスは第16代ローマ皇帝として、長引く戦争や疫病の蔓延など大変な困難の中で国を治めた。
皇帝なのだから権力者だ。しかもトップオブトップ。贅沢な暮らしだってできるだろうし、軍を意のままに使って自分は安全な場所にいることもできただろう。
ところがマルクス・アウレリウスは哲学者のように生きることを選んだ。
質素な暮らしをし、戦争でも自ら前線に立って兵士たちの士気を高める努力をしていたという。正義とは何か、勇気とは何か自問して、美徳に沿った行動をとったのだ。
しかし、そんなマルクス・アウレリウスも生まれつき賢者であるわけではないし、私たちと同じ人間である。
すごい葛藤の中で、自分を律しながらどうにかこうにかやっていたに違いない。
自分の内面は自分でコントロールできる
『自省録』は、マルクス・アウレリウスが過酷な軍営生活の中で自分に向けて書いたものだ。ともすると泣き言を言いそうな自分に言っているのだ。
「イヤなやつがいても怒ったりしないで、しょうがないなって思って親切にしてやれ」とか「未来のことを心配するな、そのときがくれば理性で対応できる」とか。
マルクス・アウレリウスが思想の根幹としていたストイシズムの教えでは、外部のことはコントロールできないが、自分の反応は自分でコントロールできるとされる。イヤな相手に会うと、反射的に「イヤだな」「うるさいな」などと思ってしまうかもしれないが、「しょうがないな」「だからどうした」など、自分が思いたいように思えるように理性を鍛えていけばよいというのだ。
逆に言うと、そういうことを書いているマルクス・アウレリウスに対しては「イヤなやつがいるんだね。つい未来を心配しそうな自分がいるんだね」……と、人間らしい姿を感じるのである。
そして、これらの言葉は時代も地域もこえて共感ができる。
まるで自分に言ってくれているかのように感じる言葉がたくさんある。
そのマルクス・アウレリウスがこう言っている。
人生にはリズムがある
見えるものが何か増えるとでもいうのか?(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
時代が変わっても、人間の心や人生には普遍的なパターンがある。
これを理解し、歴史を見ることによってこれから起きることも予測できるし対処できるというのである。
歴史は繰り返されてきた。未来のことはわからないが、災害、疫病、戦争など、マルクス・アウレリウスの時代と同じではなくても似た困難は起こるかもしれない。
かつて人間がどのように考え、行動し、乗り越えてきたかを見ること、人間の普遍的なパターンを理解することは、未来の困難を乗り越える鍵になるだろう。
マルクス・アウレリウスが困難の中で書き綴ってきた言葉は、助けの一つになりそうである。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)