いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

人前で話すことに対する苦手意識
子どもの頃から、人前でしゃべることが苦手だ。みんなに見られていると思うと緊張し、不安になり、自分でも何を言っているかわからなくなってしまう。なるべく発表の機会は避けたい。友人の結婚式でスピーチを頼まれたときも、「うまくしゃべれないから」と断ったくらいだ。
フリーで仕事をするようになってから、どういうわけか大勢の人の前で話す機会が増えてしまい、たまに講演などもやっているが苦手意識はあまり変わらない。内容については自信を持っているものの、ひそかに「しゃべるの苦手なことがバレませんように……!」と祈っている。そして、終わった後には「絶対バレた! もうダメだ」と冷や汗をかく。
そうやってガクガクブルブルしている私に対して、ストイシズムの哲学者エピクテトスは言うだろう。
「あなたはいったい何を求めているのか?」
自分に喝采を送る
なぜなら、自分の力の及ばないものを求めていないかぎり、不安であり続ける理由がないからだ。
それこそが、キタラ奏者が一人で弾き語りをするときはいっさい不安を見せないが、舞台に上がると、たとえ素晴らしい美声とともにキタラを見事に演奏しても、不安な様子を見せる理由だ。
そうなるのは、上手に歌いたいだけでなく、拍手喝采をもらいたいとも願うからだが、こちらについては奏者にはどうすることもできない。(エピクテトス『語録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
反応を期待せず、「できることに集中する」
ストイシズムは、自分でコントロールできないことは手放し、コントロールできることに意識を向けるよう説く。
講演なら、そのテーマについて聞きたい人に対し、心を込めて伝えるしかない。
話す内容の準備は自分のコントロール下にあることだ。伝わりやすい構成を考えるなど、できることを最大限やっておくことは必要だろう。
だが、聞いた人がどう思うかはコントロールできない。アンケートに「トークスキルがなさすぎる」と書かれないようにしたいと願っても、それはどうにもできないのだ(実際に書かれたことがある)。
「こう思われたい!」「拍手喝采されたい!」は不安のモトだ。
そんな願望は手放してしまったほうがいい。
本書にはこうある。
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
そう、聞き手のために精一杯やった自分に拍手、でいいのだ。不安になる必要はない。自分ができることに集中しよう。きっとそのほうが、良い結果になるはずだ。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)