「60歳以降の仕事人生にも、ガイドが必要だ」――そう語るのは、リクルートワークス研究所の坂本貴志さん。高齢期の就労・賃金を専門とする坂本さんが、65歳以上・640万人のデータを分析し、まとめた書籍が『月10万円稼いで豊かに暮らす 定年後の仕事図鑑』です。
定年退職=引退だった時代は終わり、いまや「定年後の仕事探し」を自分自身で行う時代がやってきました。本書では、実際に働いている人のデータを参照しながら、19カテゴリ、100種類の仕事を紹介。現役時代とは全く違う仕事選びのコツについても解説しています。この連載では、本書より一部を抜粋・編集して掲載します。今回は、実際に定年後の仕事をしている方のインタビューです。

【定年後の仕事】72歳・現役時代は営業マンだった男性が「老後の仕事としてはベスト」と語る職業とは?Photo: Adobe Stock

65歳までフルタイム、その後は
駐車場管理の仕事で週2~3回勤務に

イナモリ ケンジさん(仮名)
72歳男性 宮城県

 旅行会社を退職したあと、海外にある関連会社で約8年働きました。帰国して1年間は仕事をせずインドに長期滞在したりしていたのですが、体を動かしたいし、趣味のゴルフ代も稼がないといけないということで、駐車場管理の仕事を始めたのが約6年前です。

 勤務は週に2~3回。朝8時から立体駐車場の事務所でExcelで前日の売り上げを集計します。それが終わったら精算機を3カ所回ってサービス券や駐車券を回収し、事務所に戻ってデータと照合します。問題なければ報告書類を作り、オーナー会社に提出に行ってメイン業務は終了です。

 その後は駐車場の巡回をします。1階から7階まで歩きながら、異常がないかを確認。危ない駐めかたをする人がいたら注意したり、空き缶やタバコなどゴミがポイ捨てされていたら拾ったり。大きな駐車場ではないので、ゆっくり歩いても15分ほどでしょうか。その後事務作業をして、正午前に次の人が来たら交代です。

誰にも気を遣わない仕事なのがいい

 巡回では1500歩ほど歩くので適度な運動になりますし、精神的なストレスがほとんどなく、マイペースで仕事ができる。老後の職場としてはベストですね。事務所にひとりなので、誰にも気を遣わないのが本当にいいんです。現役時代はお客さんに気を遣いますし、営業成績のプレッシャーもありました。今は言われたことをキチッとこなせば100点ですから。

 その代わり給料は最低賃金です。ただあまり稼ぐと税金が上がってしまうので、このくらいでいいかなと思っています。

 午前中のみ、週2~3回という勤務形態もいいですね。私を含め、今は65歳までフルタイムで働く人が多いと思いますが、そうすると自分の時間は土日しかないわけですよね。死ぬまでそれを続けるかというと抵抗がありました。もう50年働いているわけですから、少しは時間的なゆとりが欲しかったのです。

 今の仕事で大変なことはあまりないのですが、データと紙のチケットの数字が一致しないときはちょっと困ります。データを見直したり、チケットが落ちていないか探したりしないといけません。あとは接触事故が年に数回起こります。警察を呼ぶのはお客さん自身なので、私はそれに立ち会うくらいですけれど。まれに人身事故が起きたら、オーナー会社の担当者が来て、警察も救急車も呼んでと右往左往になります。

 今後は、75歳になって後期高齢者入りしたら駐車場の仕事も辞め、バックパッカーとして旅行をしようと思っています。いつまで体が動くかわからないけれど、世界を放浪したいですね。