
子どもが感染する病気として知られるRSウイルス感染症だが、近年、大人も感染し、さらに重症化するリスクがあることがわかってきた。大人がRSウイルス感染症にかかるとどのような症状が出るのか。専門医に聞いた。(取材・文/フリーライター 楠本知子)
肺炎に進行する確率は
インフルエンザと同じくらい
「RSウイルス感染症とは呼吸器のウイルス性疾患で、2歳くらいまでにほとんどの子どもが初感染する『子どもの病気』として知られています。症状としては、発熱や咳、痰などで、特に息苦しさがあり、一度かかっても、何回も感染と発症を繰り返すことがあります」
こう話すのは、埼玉医科大学医学部国際医療センター感染症科・感染制御科教授の関雅文氏だ。
RSウイルスに感染すると生じる発熱、咳、痰、息苦しさの症状は、子どもは特に顕著に出るが、大人は一般的な風邪に近い症状として現れるため、他の感染症と区別がつきにくかった。
しかし、コロナ禍以降、さまざまな診断技術や見識が深まり、今まで一般的な風邪だと思われていたものが、実はRSウイルス感染症だったという例が増えてきている。
「その結果、大人の肺炎の原因としてRSウイルス感染症が関与していることがわかってきました。一般の風邪から肺炎に進行する割合は数%とされていますが、RSウイルス感染症から肺炎になる確率は、インフルエンザと同等の10~30%に上るというデータもあります。インフルエンザレベルで注意が必要な感染症としてRSウイルス感染症がとらえられるようになっています」
大人がRSウイルス感染症にかかった場合と、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症になった場合の症状の違いはどのようなものだろうか。
「大人のRSウイルス感染症は、インフルエンザほどの高熱は出ないものの、咳や息苦しさなど、呼吸器症状が出現して肺炎を起こしやすく、肺炎になった場合も長引くのが特徴です」
これに対しインフルエンザは、38度以上の高熱や関節痛、倦怠感などの全身症状が強く出るが、鼻水や咳は少ない。新型コロナウイルスはオミクロン株になって軽症化したが、咽頭痛が多いことと、特に高齢者で基礎疾患が重症化しやすいのが特徴だ。