いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

弱みにはすごいポテンシャルがある
以前「苦手なことを克服すると、それが起業のネタになる」といった内容の文章を読んだ。
たとえばあがり症だ。
あがり症で人前で話すなんてとてもできないと思っている人が、うまいことそれを克服できたなら、同じように悩んでいる人にアドバイスをすることができる。
最初からプレゼンが得意な人よりも、悩みに寄り添うことができるし、上手に教えることができるだろう。
こう考えると、弱みにはすごいポテンシャルがある。
私は弱みよりも強みに目を向けることこそが良いと考えてきたのだが、なるほどそういう考え方もあるなと思ったのだ。
弱みを把握する
起業のネタにするかどうかは別にして、自分の弱みを理解しておくのは大切なのではないだろうか。
本当は苦手なのに「できる」と過大評価すれば、できない現実に苦しむだろうし、周囲に迷惑をかけることにもなりかねない。時と場合によっては白旗を挙げ、助けてもらうことも必要だろう。
私はスケジュール管理が苦手で時間の見積もりが甘いのだが、それを弱みとして自覚しているからこそ、かなり注意を払っている。それでも迷惑をかけることがあるのだから、自覚がなければ大変なことになるのは目に見えている。
弱みの把握からさらに踏み込んで、「弱みの改善のために努力せよ」とストア哲学者のエピクテトスは説いている。
弱みを見つけ、あえて反対のことをする
そういう極端なことをするのは、自分を鍛えるためだ。
わたしには苦労を避けたがるところがあるので、印象を感じ取る力を鍛え訓練する。
そうすれば、あらゆる苦労を嫌悪しなくなるから。
……そのように、人それぞれがそれぞれの目的に応じて訓練をする必要がある。(エピクテトス『語録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
一般にストイシズム(ストア哲学)は、禁欲主義と言われる。「禁欲主義」とだけ聞くと、なんだか堅苦しくて面白くなさそうだ。私も以前はそんな印象を持っていた。
しかし、よりよい人生にするため、幸福に生きるために、弱みを克服しようという考え方が根底にあるのを感じて印象が変わった。
ほとんどの人は快楽に傾きがちで、苦労は避けたい。
私は一般の人に輪をかけてそうだ。面倒くさがりで、ちょっと頑張ろうという気があってもすぐスマホや酒に流される。多かれ少なかれ、誰もがそういう弱みを持っているだろう。
あえてそういった部分に挑戦しようとするのがストイシズムだ。快楽に傾かず、苦労を厭わずにいられたら、人生がもっと良くなる。
まずは自分の弱みを把握しよう。
そして、あえて反対のことをしてみよう。
優柔不断なら、あえて即決する。完璧主義なら、あえてスピード重視で動く。人前で話すのが苦手なら、あえてプレゼンにチャレンジする。
弱みがあるのなら、よりよい人生のために、乗り越えるべく向き合ってみてはどうだろうか。
私も少しずつやってみようと思う。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)