新年度を迎えて1ヵ月が経ち、この春に社会人になった人や、新しい仕事を始めた人のなかには、慣れてきたと感じる人もいれば、「うまくいかないな」と悩んでいる人もいるのでは。仕事の人付き合いにおける「信頼されるコツ」をまとめた書籍記憶に残る人になるの著者である福島さんも、かつて同じ経験をしました。世界的ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンを経て、31歳でカード会社の営業になるも、当初は成績最下位に。今となって振り返ると、いくつもの「勘違い」をしていたそうです。
そこでこの記事では、福島さんに、新社会人や若手社会人がやりがちな「失敗」や「勘違い行動」についてお話しいただきました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

仕事ができる人は「メモをとる前後」に何をしているのか? 「聞いただけ」で終わらせない人の「意外な習慣」とはPhoto: Adobe Stock

「メモして満足」してないか?

 若手社員がやりがちな「失敗」のひとつに、「メモをとること自体が目的になってしまう」というのがあります。

 僕はそれを“メモ魔だけど理解ゼロ病”と呼んでます。

 これも、営業時代の自分自身の失敗から来ています。
 当時はとにかく必死でメモをとっていたんですが、あとから見返すと、内容が頭に入ってないんです。

 お客様はその場では「熱心だね」と言ってくれるけど、次に会ったときにその内容が全く活かされていない。つまり、メモに集中しすぎて相手の話を“理解”できていませんでした。

 実際、「え、前も話したよね?」と、あきれられたこともありました。

 本来大切なのは、知識や情報を得ることではなく、そこから「知恵」を生み出すことです。

 たとえば、お客様の話を聞いて「ということは、次はこういう提案をしたら喜んでもらえるかな?」と考えることが必要だったんです。

 でも当時の僕は、ただの“情報の書き写し”に終始していた。事実を並べて満足してたんです。

点をつないで「知恵」を生み出す

 それが変わったのは、ある人に「メモのとり方」を教えてもらったことがきっかけでした。
 交流会で出会った方が教えてくれた「マッピング」という手法です。

 たとえば、前に建設業界の人から聞いた話、今日、IT業界の人から聞いた話、それぞれをメモしたうえで、「この2つの情報、どこかでつながらないかな?」「共通点はないかな?」と考えていきます。

 すると、「この話、あの業界の人にも役立つかも」「こんな提案をしたら喜ぶかも」とか見えてくるんです。

 点在していた情報がつながると、そこに“知恵”が生まれます。
 
スティーブ・ジョブズも「ドットをつなぐことが大事」と言ってましたが、まさにそれと同じです。

 情報をメモするだけの人は、いわば「点」を並べているだけ。それでは、永遠に“ドット絵”にしかなりません。

 点をつないで「線」や「面」にしていくことで、立体的な提案ができるようになるんです。

良い「点」を、自分で集めていこう

 一方で、メモを否定するわけではありません。点をつなぐには、まず“良い点”を集める必要がありますから。

 僕も営業時代は、自分で「ヒアリングシート」を作って、業界の現状、課題、目標、事業計画など、お客様に聞くべきポイントを事前に整理していました。

 必要な部分だけをメモして、あとから“つなぐ”。これを1年くらい続けていたら、だいたいどの業界も構造が見えるようになってきて、商談にも丸腰で臨めるようになりました。

 結果的に、その場の会話を楽しめるようになって、お客様との距離も自然と近づいていったんです。

「メモ」より大事な、自分から「聞く姿勢」

 これは社内の場合も同じです。「指示はメモしよう」ってよく言われますけど、言われたことをただ書くだけじゃ不十分。むしろ大事なのは、自分から聞く姿勢です。

 たとえば僕は、上司に「一番やってほしくないことって何ですか?」って聞いていました。

 資料を完璧にしてから持ってきてほしい人もいれば、2割できた段階で見せてくれという人もいる。そういった「点」を集めると、「この人は、こういう働き方を評価するんだな」と、相手の思考や価値観が多角的にわかってきます。

 想像だけでは限界があるから、結局、本人に聞くのがいちばん確実で早い。これはホテルマン時代にも実感したことです。

 メモをとることは悪くないけれど、指示を待つのではなく自分から情報を取りにいかないといけない。

 そして、点在する情報をつないで、使える“知恵”に変換しないと意味がない。
 
その積み重ねが、若手を一人前にしていくんだと思います。

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんへのインタビュー記事です。)

仕事ができる人は「メモをとる前後」に何をしているのか? 「聞いただけ」で終わらせない人の「意外な習慣」とは福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となり、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書。