新年度を迎えて1ヵ月が経ち、この春に社会人になった人や、新しい仕事を始めた人のなかには、慣れてきたと感じる人もいれば、「うまくいかないな」と悩んでいる人もいるのでは。仕事の人付き合いにおける「信頼されるコツ」をまとめた書籍『記憶に残る人になる』の著者である福島さんも、かつて同じ経験をしました。世界的ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンを経て、31歳でカード会社の営業になるも、当初は成績最下位に。今となって振り返ると、いくつもの「勘違い」をしていたそうです。
そこでこの記事では、福島さんに、新社会人や若手社会人がやりがちな「失敗」や「勘違い行動」についてお話しいただきました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

「答えだけ投下しちゃう病」とは?
若手社員がやりがちな「失敗」でよくあるのが、「結論ばかりを言いすぎる」ことですね。僕はこれを“答えだけ投下しちゃう病”と呼んでます。
これは僕自身、営業時代にハマっていたパターンです。営業の本をたくさん読んで、「結論から話せ」と書かれているのを真に受けて、全部の会話を「結論としては~」で始めていました。
社内の上司にも、結論から話さないと怒る人が多かったので、それが“正しい話し方”だと思い込んでいました。
でも、ある日お客様に「福島さんの話は説明ばかりでイメージが湧かない」と言われて、失注したことがあったんです。
相手は経営者の方だったので、時間がないだろうと思って結論をコンパクトに伝えたんですけど、逆に「伝わらなかった」と言われてしまった。
「過程」こそが人の興味を誘う
結論だけ伝えても、相手には響かない。
そこで初めて、ストーリーテリングの重要性に気づいたんです。
その後の提案の場では、商品のことはもちろん、「自分のストーリー」もしっかり話すように意識しました。自分の経歴や考えてきたこと、これまでの失敗なども包み隠さず伝える。
いきなり話し出すと、お客様も「商品の説明をしてほしい」と感じるかもしれませんが、冒頭でお客様と良い雰囲気がつくれて、お客様の方から僕の経歴や経験に興味を持っていただけたときは、自己紹介だけで30分くらい使っていた時期もありました。
とくに高価格帯商品を提案するときほど、この“ストーリー”が効きます。
相手が知りたいのは「この商品を買うかどうか」ではなく、「この人と一緒にやっていけるかどうか」だから。過去の経験や価値観を語ることで、“この人となら”と思ってもらえるんです。
「説明」は聞きたくない人も、「歴史」には興味を持つ
自社のストーリーを語るのも同じです。僕は自社の歴史を徹底的に調べて、「うちの会社、最初に何やってたと思います?」とクイズ形式で話すようにしてます。
すると、「えっ、なにそれ?」って、けっこう食いついてもらえる。
そこから、「運送業から始まって、じつは“お金を運ぶ”という仕事をしていた」「それが貸付に発展して銀行業になって、やがてトラベラーズチェックを作り、最終的にカード事業につながっていった」みたいな流れを話すと、「そんな歴史があったんだ」って興味を持ってもらえるんです。
話を聞いてもらう土台をつくる意味でも、ストーリーって本当に大切なんです。
「結論」は言わなくていい
今はもう、「最後まで、結論は言わなくていい」とすら思っています。
結論って、「言うもの」じゃなくて「感じてもらうもの」なんですよね。
いろんなヒントやストーリーを丁寧に伝えていくと、最後にお客様ご自身が「つまり、こういうことか」って、自分の中で結論を導いてくれるんです。
そうやって自分で気づいたことって、納得感がまったく違う。
無理に押しつけた結論では、人は動きません。
だから僕は、相手が結論に気づけるようなストーリーをお伝えするようにしています。
(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんへのインタビュー記事です。)

「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となり、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書。