新年度を迎えて1ヵ月が経ち、この春に社会人になった人や、新しい仕事を始めた人のなかには、慣れてきたと感じる人もいれば、「うまくいかないな」と悩んでいる人もいるのでは。仕事の人付き合いにおける「信頼されるコツ」をまとめた書籍記憶に残る人になるの著者である福島さんも、かつて同じ経験をしました。世界的ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンを経て、31歳でカード会社の営業になるも、当初は成績最下位に。今となって振り返ると、いくつもの「勘違い」をしていたそうです。
そこでこの記事では、福島さんに、新社会人や若手社会人がやりがちな「失敗」や「勘違い行動」についてお話しいただきました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

仕事ができない人は「言葉づかい」ばかり気にする。では、仕事ができる人は会話で“何”を大事にする?Photo: Adobe Stock

「ビジネス語もどき症候群」とは?

 若手社員がやりがちな「失敗」のひとつに、「ビジネス語っぽいけど、じつは違う言葉遣いをしてしまう」というのがあります。

 僕はそれを“ビジネス語もどき症候群”と呼んでます。

 たとえば、「なるほど」。
 僕も新人営業時代は口癖のように使っていました。でも何度か先輩に「それ、やめた方がいいよ」って注意されたんです。

 理由は、「目上の人に使うのは失礼だから」って。お客様に対してはもちろん、社内で上司や先輩に「なるほど!」って言うと、「上から目線だ」と捉える人もいます。

 言葉自体が悪いのではなく、問題は、その“響き”や“印象”。つまり受け取る側のイメージの問題なんですよね。でも、いまだに若手営業の方と話すと「そういう言葉遣い、注意されました」と相談を受けることが多いです。

ある「おばあちゃん」の一言

「なるほど」を注意された僕は、「おっしゃるとおりですね」とかに言い換えてみたのですが、なんだかしっくりきませんでした。

「なるほど」って、感情が入った主観の言葉です。でも「おっしゃるとおり」は客観的な感想で、気持ちが乗らないからです。

 そんなとき、ある出来事がありました。
 赤坂見附駅のエレベーターで、ある「おばあちゃん」と乗り合わせたときのこと。僕が「開くボタン」を押して「どうぞ」と言ったら、そのおばあちゃんは「すみませんね」と言って、ニコッと笑ってくれました

 その瞬間、すごくあたたかい気持ちになったんです。「あれ? いま、「すみません」って言われたのに、こんなに嬉しいってどういうことだろう?」と、僕は疑問に思いました。

 そのとき思ったのは、「言葉が悪いんじゃなくて、気持ちが乗っていないことがいけないんだ」ということです。大事なのは“言葉遣い”じゃなくて“中身”だなと。

 それ以来、僕はまた「なるほど」をガンガン使うようになりました。ただし今度は、ちゃんと気持ちを込めて。

「言葉づかい」よりも大切なこと

「ビジネスの場ではNG」って言われる言葉、けっこうありますよね。
 他にも「ご苦労様です」とか。「目上の人に使うのは失礼」とよく言われますが、僕は別に使ってもいいと思っています。

 僕の後輩に、お客様に「ご苦労様です」と言いながらおしぼりを渡す人がいましたが、お客様はとても喜んでいました。意味として間違っているわけではありませんから、敬意を持って使えば何も問題はありません。

 その言葉が「失礼かどうか」なんて、誰かが後から決めたこと。それに縛られるよりも、本来の意味や、自分が込めた気持ちの方がよっぽど大事だと思うんです。

「どんな言葉を使うか」ではなく、「どんな気持ちで使うか」が重要です。
「これはNG」「これは正解」みたいなルールに縛られるんじゃなくて、“自分の意思”で言葉を選びましょう。

(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんへのインタビュー記事です。)

仕事ができない人は「言葉づかい」ばかり気にする。では、仕事ができる人は会話で“何”を大事にする?福島 靖(ふくしま・やすし)
「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となり、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書。