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20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

ストレスを与えない文章を書く人が知っている「構成」のキホンとは?Photo: Adobe Stock

3分でわかる「構成」の基本

「おはようございます。今日もがんばりましょう」みたいな短い文章ならいいのですが、ある程度のボリュームになると、言いたいことをすっきり伝えるための「流れ」に頭を悩ませることになります。この流れのことを「構成」といいます。

ぼくは、構成とは「曲がり角」のようなものだと考えています。

ストレスを与えない文章を書く人が知っている「構成」のキホンとは?

田舎にある、地平線が見えるほどまっすぐ伸びた道路を想像してください。
アクセルを踏むだけでハンドルを切る必要がない。運転はラクな一方で、流れる景色も判で押したように変わらず、退屈で眠くなるような一本道です。

曲がり角がなければ、ひとつの風景しか見ることができません。そうなると、読み手としては頭も身体も使わないから飽きてしまう。少し抑揚を変えたくらいでは退屈さはしのげないし、そもそも直線だけでは目的地にはたどり着けない。だから、あるところで曲がり角を設ける必要がある。
それが構成の基本的な考え方だと思っています。

ではどんな構成があるのか。代表的なのが次の3つの型です。

①序論・本論・結論(序破急)
もっともオーソドックスな構成であり、ジャンルを問わずよく使われています。

「序論」で主題の提示や問題提起をして読み手の興味を引き、「本論」で具体的な議論を展開して、「結論」で全体をまとめます。小説や映画、舞台でも物語の基本は三幕構成(設定、対立、解決)です。

ぼくが以前勤めていた出版社では、この型を「序破急」と呼んでいました。
ビジネス書や実用書では「破(=解決策)」がたくさんあったほうが読者の満足度が高まりやすいとされるため、1章が序、2~7章までが破、8章が急、つまり「序破破破破破破急」みたいな章立てでもよしとされていました。

②起承転結
こちらも古くから使われている構成です。

「起」で主題を提示し、「承」でそれを深掘りして、「転」で新たな展開や視点を導入し、「結」で全体をまとめます。「問題解決型」の場合は、現状分析や問題提起から始まり(起)、原因分析(承)、解決策の提案(転)、実行計画(結)という流れで展開します。

ただ編集者の立場からいうと、もはやマス向けのコンテンツでは順序立てて「結」まで読者を引っ張るのはかなり難しく、各フェーズに「転」を入れなければならない状況になっていると感じます。「起→転、承→転、転→転+結」みたいなイメージです。

動画コンテンツの世界でも同じ傾向が見られます。視聴者の「待てる時間」はどんどん少なくなっているため、「転」と「転」の間隔が短くなっています。

お手本のような起承転結は、いまの時代には通用しない。そう言ってよいと思います。

③PREP法
ビジネスや学術で効果的とされているのが「PREP法」です。

Point(結論)、Reason(理由)、Example(例)、Point(結論)の順で展開します。主張とその根拠を明確に示すことができるので、説得力のある文章を書きたいときに便利な構成です。

同じくビジネスシーン、とくに会議などで報告、連絡、相談をしたいときに使いやすい構成として「SDS法」があります。Summary(概要)、Details(詳細)、Summary(まとめ)です。

仕事で使う資料や事務的なメッセージなどの場合、本記事で紹介した型にはめて構成をつくり、そこに素材を流し込んで、最後に整えるというプロセスで問題ないでしょうし、それ以上を求められることは少ないはずです。ぜひ実践してみてください。

庄子錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。