警官が上ってみると、一段一段上がるごとにギギギィ、と階段がきしむものすごい音がして、家中に響き渡るという。あまりにも大きな音に警官も驚いた。

 大きな音をたてて上った二階には両親の部屋があり、その隣に彼女の部屋があった。

 両親の隣の部屋で彼女は亡くなっていた。階段を上り下りするとものすごい音がし、一階の階段近くの部屋にはおじいさんとおばあさんがいる。

 そのように考えると彼女を殺して逃げるという他殺の線は難しい、というのが刑事たちの考えだった。

「他殺しかない」という結論

「でも、その家で死んでいるのは事実なんだよね。今検証したように病死も自殺の可能性もないとすると他殺しかない。私が実際自分で解剖したわけではないから100%とは言えないけど、この資料を見る限りは、死体からは病死と自殺は考えられないので、他殺しかない。もう一度その線で捜査してみたらどうだ」と私は言った。

「そうですね、分かりました。もう一度調べてみます」と言って、刑事は私の家を後にした。

 それから一カ月半後、新聞に「コンビニの店長、アルバイト女性殺害の容疑で逮捕。コピー機で合鍵作る」という見出しが出た。

 店長は女性に交際を断られてからも、ずっと好きでストーカーのように彼女のことを見ていた。

 彼女のバッグから家の鍵を盗み出し、店のコピー機を使って、鍵の表と裏をコピーし、それを貼り合わせたものを鍵屋に持っていって、合鍵を作った。

 その鍵を使って真夜中に玄関を開けて入った。二階に彼女の部屋があることを知っていた犯人は、階段を上がろうとした。

 すると、ギギギィという音がしたので、慌てて足を戻し、階段の横の手すりを使って、音をたてずに二階へ上ったのだ。

 そして、寝ている彼女を布団の上から押し付け窒息死させた。死んだ彼女を愛撫した。そしてまた上がってきたのと同じ方法で下へ降り、玄関から逃げたのだった。

 彼女が結婚をするという噂を聞いて、誰にも渡したくないとの思いから殺意を抱いたという。あまりにも一方的で変質的な愛であった。

 人を愛する、とはなんだろうか。