習近平「アジアの家族」発言の狙いは?

 4月に習近平氏はマレーシアを訪問した。マレーシアには、エヌビディア、米インテル、英アーム、欧州系のインフィニオンやSTマイクロエレクトロニクスなど主要な半導体企業が拠点を置く。

 中国はマレーシアとの関係を強化し、半導体製造技術の強化を構想しているだろう。そして中国がマレーシアを、対米貿易戦争の仲間へ引き込もうとしているとも推測できる。習氏は最近、「アジアの家族」というワードを使い始めている。

 米政権は今後、ファーウェイなど中国の先端企業に対してさらに厳しい圧力をかけることが予想される。特定の企業を狙い撃ちにした制裁を発動し、追い込むことで中国の譲歩を引き出そうとするはずだ。

 トランプ氏の経済ブレーンといわれるスティーブン・ミラン大統領経済諮問委員会委員長は、関税を重要な政策手段に位置付けている。関税を引き上げ、相手国を窮地に追い込むことで相手国は米国の要求をのみ、ディールは成立すると考えているようだ。

 ベッセント米財務長官は、同盟国と貿易協定を締結した上で、中国に不公正な経済慣行を求める考えだ。トランプ政権は今後、対中融和策を取る国には追加関税や規制を課すこともあり得る。

 今のところ、米中対立は激化しこそすれ緩和するとは考えられない。そうした懸念から、中国経済の成長や株価予想を下方修正する傾向がある。中国で春と秋に開催される貿易展示会(広州交易会)では、米国向け輸出の減少で倒産リスクに備える出展企業が増えたという。

 米国の対中デカップリング政策の推進により、中国の景況感は一段と悪化するだろう。関税率引き上げで米国の輸入物価は上昇し、スタグフレーション(景気後退と物価上昇の同時進行)の懸念が高まることも想定される。世界同時不況が起きるリスクは明らかに高まっている。日本企業も個人も覚悟しておくべきだろう。