孫正義とトランプ次期大統領Photo:Andrew Harnik/gettyimages

日本製鉄によるUSスチールの買収計画に関して、バイデン大統領に最終判断が委ねられました。一方で先週、ソフトバンクグループの孫正義氏がトランプ次期大統領との親密ぶりをアピールしたばかり。日本製鉄とソフトバンク、米国でのビジネス交渉術に、どんな違いがあるのでしょうか。(トライズ 三木雄信)

米メディアも驚くほどの親密ぶり
ソフトバンク孫氏とトランプ氏

 12月16日、ソフトバンクグループ(以下、SBG)の孫正義氏とトランプ次期米大統領が会談し、「SBGが米国に1000億ドル(約15兆円)を投資し、10万人以上の雇用を生み出す」と発表しました。

 トランプ氏は、「この歴史的投資は米国の未来への信頼であり、AI(人工知能)をはじめとした産業が米国内で成長することを保証するものだ」とコメント。一方の孫氏も、「投資金額が(前回トランプ氏が大統領だった時の)2倍になっているのは、信頼感が2倍になっているからだ」と調子を合わせました。

 さらに孫氏が、トランプ氏に向かって「あなたのサポートが必要だ」と訴えると、トランプ氏から「私はあなたをサポートするし、アメリカも国としてサポートする」と返答をもらい、固く握手。トランプ氏が孫氏の肩をグッと抱き寄せ、その親密ぶりをアピールしました。

USスチールの買収承認に
苦しむ日本製鉄

 米メディアも驚くほどの親密ぶりを見せつけた孫氏とトランプ氏。それと対照的なのが、日本製鉄のUSスチール買収計画ではないでしょうか。ちょうど今から1年前となる23年12月18日、日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールを買収すると発表しました。買収額は約2兆円で、実現すれば日米企業の大型再編となります。

 日本製鉄が買収を完了するためには、対米外国投資委員会の承認を受ける必要があり、12月23日が期限となっていました。しかし審査の結果、委員会として一致した結論に至らず、バイデン大統領に最終判断が委ねられました。

 そもそも11月の米大統領選前から、全米鉄鋼労働組合(USW)の支持を得るため、バイデン氏もトランプ氏も日本製鉄によるUSスチール買収には反対してきました。

 そうした逆境下でも、日本製鉄は買収の意義を強調し続けています。今月20日には、「バイデン政権が審査に不当な影響力を行使した」と指摘し、「買収が阻止されれば法的措置も辞さない」といった内容の書簡を米政府に送ったそうです。

米国サイドから見た
ソフトバンクと日本製鉄の違いとは?

 SBGがトランプ氏に大歓迎された一方、日本製鉄はバイデン氏にもトランプ氏にも冷淡な態度を取られているのが現状です。米国サイドから見た、ソフトバンクと日本製鉄の決定的な違いとは何でしょうか? 孫氏の、知られざる苦労を振り返りながら考えてみましょう。