中国はトランプ関税でさらなる不況へ

 中国のAI業界では次々に新しいモデルが登場している。昨年秋の段階では6カ月程度だった米中のAIモデルの実力の差は、3カ月程度に縮小したとの専門家の見方もある。

 H20チップの輸出管理厳格化により、代替品となる中国のファーウェイのAIチップへの需要が増加するだろう。それに伴い、中芯国際集成電路製造(SMIC)やカンブリコンなど中国半導体企業の成長が加速するとの予想も出ている。

 ただ、現時点で、中国の国産IC(集積回路)チップに対する期待はやや楽観的だと思う。また、先端分野だけで中国経済全体を押し上げるエネルギーはない。

 不動産価格の下落が続く中、個人消費は本格的に盛り上がっていない。そこに、トランプ関税のネガティブな影響が重なる。中国経済はかなり厳しく、1~3月期の実質GDP(国内総生産)は前期比で1.2%増だった(前年比では5.4%増)。

 一般的に、GDPの成長は前期からの増減で評価する。昨年10~12月期、中国の成長率は前期比1.6%だった。政府の家電や通信機器、EVなどの買い替え策、住宅在庫買い入れ措置の拡充を行ったのにもかかわらず、1~3月期の経済の伸び率は低下した。

 それだけ不動産バブル崩壊の影響が甚大なのだ。3月、主要70都市中41都市で新築住宅価格は下落した。不動産市況の悪化に歯止めがかからず、地方政府の歳入の一つである土地の利用権売却益は減少している。家計の節約心理も続き、内需は縮小均衡気味に推移し、デフレ圧力が高まっている。

 それに加えて、トランプ関税政策は中国の輸出にとって大きな逆風だ。低価格のアパレルや日用品を、米国などに輸出して急成長を遂げたECのTemuやSHEINは、米国での値上げを余儀なくされている。

 関税の影響で、すでにSHEINは生産調整に追い込まれているようだ。トランプ政権の発足から2カ月間で、中国の一部の地域では中小の縫製工場の約半数が廃業したという報道もある。中国の経済状況は一段と厳しさを増していくのは間違いない。