
企業の間で人工知能(AI)を事業に組み込む動きが広がる中、米 IBM は同社が投資家にとって再び重要な存在になったとアピールしている。だがIBMには証明しなければならないことがまだ多い。
IBMのアービンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)は、生成AI関連事業の規模を60億ドル(約8600億円)へと地道に押し上げてきた。この大部分は、AIの活用を目指す企業向けのコンサルティング契約だ。ソフトウエア事業も成長しており、2021年にIT関連の外部委託事業(現キンドリル)を分社化して以降、焦点が一層絞られている。
こうしたことを総合すると、IBMは絶好調とまではいかないが以前より好調だ。IBMでCEOを務めたルイス・ガースナー氏は2002年、1990年代にビジネス向けコンピューターの代名詞でもあった同社の再建について、「Who Says Elephants Can’t Dance?(邦題:巨象も踊る)」という本を書いた。それ以降、クリシュナ氏ほどIBMを踊れる状態に近づけた経営者はいないとの見方もある。
ただ、IBMの株価は長い低迷を経て、すでに成長への転換を織り込んでいる。そのため投資家の期待を下回りやすくなっている。24日の米株式市場では、前日発表の決算が堅調な内容だったにもかかわらず同社は6.6%安で引けた。
24日の急落後でもIBMの12カ月先予想ベースの株価収益率(PER)は約21倍で、過去10年の平均である12倍を大きく上回る。この点ではエヌビディアやグーグル親会社アルファベット、マイクロソフトなどAI分野の大手企業を上回っているものの、まだその価値を証明していない。
クリシュナ氏は2020年にCEOに就任して以来、IBMが企業の技術革新を後押しすることに軸足を置き、IBMの製品やサービスに企業顧客を囲い込もうとする取り組みは抑制してきた。
こうした転換の中心となってきたのが、オープンソースソフトウエア大手レッドハットの買収だ。この340億ドルの買収をクリシュナ氏はCEO就任前から押し進めていた。