スマホ、ネット、SNS……気が散るものだらけの世界で「本当にやりたいこと」を実現するには? タスクからタスクへと次々と飛び回っては結局何もできない毎日をやめて、「一度に1つの作業」を徹底する「一点集中」の世界へ。18言語で話題の世界的ロングセラーの新装版『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』より、特別に一部を紹介する。

「一点集中」と「幸福」には相関関係がある
神経遺伝学のデヴィッド・ゴールドマン博士によれば、「幸福になる鍵は、いまという瞬間にどっぷりとひたることにある」という。
つまり、「一点集中すること」「シングルタスクで物事に取り組むこと」と「幸福」には相関関係があるのだ。
科学者たちの説明によると、人は1つのことに専心しているときのほうが充足感を覚える。
「マルチタスク」をやめて、毎日「シングルタスク」を徹底することによって生産性が上がることは本書で何度も述べているが、それだけでなく、シングルタスクを実践していると、人はより深い幸福を感じられるのだ。
2010年、ハーバード大学の研究者たちは成人の被験者2250人の「機嫌のよさ」や、「いまの作業にどのくらい集中しているか」などを、ランダムな間隔を置いて評価した。
すると、作業に集中して取り組んでいる人ほど、幸福を実感していることがわかった。
同様に、すぐに気が散ってしまう人ほど幸福を感じる度合いが低いことも判明した。
幸福になるには「いま」に集中する
心理学者ヴィクトール・フランクルが生きていたら、この説になにかつけくわえたかもしれない。彼は、「どんな状況に置かれていようと充実した人生を送れる人はどこが違うのか」を、生涯をかけて考えてきた。
そして、2つの心のはたらきと幸福のあいだに強い相関関係があることをあきらかにした。その2つの心のはたらきとは、「人生の一瞬一瞬に生きる意味を見出す能力」と「結果に固執して自分を追いつめる考え方を手放す能力」である。
こんにち、快適な生活を謳歌している多くの人たちが、動画や写真などで楽しいできごとを記録することに夢中になっている。と同時に、そのときに起こっている出来事をきちんと体感しそこねている。
あなたは「休日の一瞬一瞬を楽しむ」「人生の大きな出来事をしみじみと味わう」「五感をとぎすませて体験する」といったことより、「未来のいつかのためにスナップ写真をせっせと撮る」ほうを優先していないだろうか?
そんなあなたの行動は、自らの信念にかなっているといえるだろうか?
(本記事は、デボラ・ザック著『一点集中術――限られた時間で次々とやりたいことを実現できる』からの抜粋です)