いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

AI vs. 人間
悩みごとをChatGPTなどの生成AIに相談する人が増えているという。
AIは嫌な顔一つせず、即座に解決する方法を提案してくれる。やさしい言葉もかけてくれる。
こちらがしつこく同じことを相談しても飽きてどこかに行ったりしないし、八つ当たりしても大丈夫だ。
ものすごく相談しやすい。
私も、AIに仕事上のアイデアを相談したり、原稿の感想をもらったりしている。
正直、いまは細かいところで不満がいろいろあるのだが(私が使いこなせていないのもある)、すごい勢いで進化しているようなので、じきに本当に人間と話しているような感じになるだろう。
そこで考えざるをえなくなるのが、「人間とは何だろう」ということだ。
AIが人間以上に賢く優秀で、つねに機嫌よく何でも答えてくれるとき、私は人から頼ってもらえる存在でいられるのだろうか? そして私は、やはり人間に頼りたいと思うだろうか?
AIとロボットが、あらゆる知的労働も肉体労働も可能になるとき、私たち人間はどんな価値を持ち、どう生きるべきだろうか? 私たちにできることは、いったい何なのだろうか?
いま、そうした問いへのヒントを、古代の知恵に求める人が増えている。古代ギリシャに端を発する「ストイシズム」(ストア哲学)が、AIの最先端の現場であるシリコンバレーをはじめ、世界に広がっているというのだ。
ストア哲学者の一人、マルクス・アウレリウスは、「あなたの技能は何か? よい人間になることである」と説いている。
よい人間になる
よい人間になることである。
宇宙の本質や人間の本質についての一般原則の理解なくして、どうやってそれを成し遂げられるというのか?(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
ストイシズムでは、人間の本質は理性にあると考えられている。理性的に思考し、この世界の法則を理解し、それに従って行動すべきだとされる。
そのために必要なのが、「知恵」「正義」「勇気」「節制」という4つの美徳だ。
美徳に即した行動を続けることで、最高の自分を引き出すことができるのだ。
AIやロボットによってすべてが代替される世界で最後に残る仕事は、「あなたが主体的にどう生きるか」ということだけだ。
ストイシズムは、そのヒントとして、「美徳を実践して最高の人間として生きる」という理想を示してくれている。
マルクス・アウレリウスの言うように、人間や世界の本質を理解する姿勢を持ち、「よい人間」であることを追求していきたい。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)