いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

「ありのまま」をさらけだす
「パーソナルブランディング」という概念がある。自分をブランドとして捉え、効果的に世間に発信していくという考え方だ。
これは2000年頃から広まり、近年ではSNSの発展とともに、自分をどう見せるか、どう発信するのかが多くの人にとって重要な関心事になった。私もこの概念に大きな影響を受けた一人である。
たとえば、自分の専門性をわかりやすく打ちだしたプロフィールをつくり、ブログには一貫性のある情報を載せる。余計な情報は排除したほうがいい。「○○といえば△△さん」と思ってもらえるように、戦略的に発信を管理するわけだ。
この考え方はいまも重要であるには違いない。だが一昔前と比べると、自分のいい面ばかりを見せるよりも、より正直に、素の自分を見せていくほうが信頼されるようになってきたと感じる。専門性ばかりでなく、趣味などプライベートの話も含め、「いろいろな顔」を見せるのだ。
パーソナルブランディングが広まりすぎて、すごい部分ばかり見せている人がかえってうさんくさく見えるようになってきたのかもしれない。
また、いまは実物より盛って見せようとしてもすぐにバレてしまう時代だ。
そもそも完璧な人間などいない。誰でもすごい部分もあればショボい部分もある。
むしろ、欠点やみっともないところまでさらけだすほうが人として共感を呼び、多くの人に信頼されるのだ。
このことを考えたとき、ストア哲学者のエピクテトスのことを思い出した。
エピクテトスは「私のすべての行動を見て、私という人間を判断してもらいたい」という思い切ったことを言っている。
日々のマインドセット
それらがわかるのであれば、それらにもとづいてわたしのことを判断してもらいたい。(エピクテトス『語録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
エピクテトスのこの覚悟よ。
哲学者だって、もしかしたら、素晴らしい教えを説きながら、行動が伴っていない場合もあるかもしれない。
それでも、表面を取り繕うのでなく、ありのままをさらけだし、それを全部見て判断してほしいという。この覚悟が、他者からの信頼を生むのだ。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)