「女の子なんだから都会の私立はやめておけ」という悪習

――生徒たちは戸惑いませんか?

びーやま:戸惑っていると思います。しかも戸惑った末に「自分らしい選択」ができればいいですが、「先生が言ってくれているから」と最初から地元の大学しか考えない高校生は意外とたくさんいます。

 地方の国公立大学はいいところなのは間違いないですが、それはちゃんとほかの大学と比較しての判断でないといけませんから、好ましい進路選択ではありません。

 同時に、「地元の国公立大学に行け!」という先生は、強く勧めてくるわりに、その後の人生を保証してくれるわけでもありません。

 仮に、地元の国公立大学に進学したことを後悔しようものなら、「そこからがお前の人生だぞ」のようにそれっぽいことだけは言ってくれるのでしょう。そのときに「自分でちゃんと考えておけばよかった」と思うのは非常に悲しいことです。しかも、そういう生徒は国公立大学に行けるだけの学力もありますから、都会の名門大学にもおそらく入れたでしょう。

 ちなみにですが、こういった地方における進路選択の不自由さは女子生徒のほうが圧倒的に多いです。

――どういうことでしょうか。詳しくお聞かせください。

びーやま:この令和の時代に、「女の子なんだから東京の大学なんか行かなくていい!」という価値観が地方には残っています。

 もちろん、考え方をアップデートできている家庭も増えてはきていますが、それが圧倒的多数というわけではありません。

 いまだに「女の子なんだから大学は行かなくていい。行くとしても地元の大学(女子大など)にしなさい! 東京の私立? ありえない!」という考えが残っているのです。これには僕も驚きましたが、そういう教えを振り払って東京の名門大学に進学してきた人たちから何度もこういった話を聞いてきました。

 先ほどの進路指導と同じように親御さんからすれば、子どもの将来を思ってのことなのでしょうし、結局、東京に出られているケースもあると考えると、子どもへの愛情があることは間違いありません。

 ですが、こういった教育環境にいると、そもそも外に出ることをまったく考えなくなってしまう危険性があるため注意は必要です。

 やはり、進路選択をはじめ、将来を考えるうえで重要なのは、豊富な選択肢のなかから自分で道を選ぶことです。「これしかない」というのは選択させているように見えて、実はただの強制です。