今年も五月病の季節がやってきた。新年度スタートからはや2か月。社内外の人間関係で悩んでいる人も多そうだ。そんな人にお薦めなのが、「これは傑作。飛び抜けて面白い必読の一冊」「本当に悩みが解消した」と絶賛されている『「悩まない人」の考え方 ―― 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』(木下勝寿著)だ。今回は、「絶対達成コンサルタント」として数々の実績を残してきた横山信弘氏が本書から学んだ「管理職の悩みを解消するヒント」をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

悩ましい! ドンドン悪化する50代「年上部下」との人間関係。ゼロ秒で対処する方法は?Photo: Adobe Stock

「年上部下」に悩んでいる人へ

「あの人には、世話になったんだよなァ~」
「とても厳しく言えないな……」

 長年お世話になった元上司が、自分の部下になった。指示を出すのが気まずい。そんな状況に頭を抱えるマネジャーは少なくない。

 そこで今回は年上部下との人間関係改善について解説する。
 年上部下との関係に悩んでいるマネジャーは、ぜひ最後まで読んでほしい。

どうすれば元上司との関係は改善するのか?

 ある営業部長がこんな悩みを抱えていた。
 10年以上、直属の上司だった人が今では部下になっている。その上司は以前、成果が出ないときにいつも励ましてくれ、あるときは夜明けまで愚痴を聞いてくれたこともある恩師である。

 そんな元上司が今では55歳の部下。新しく導入されたシステムの利用にも消極的で、「昔のように口頭で報告させてほしい」「デジタルは苦手だから」と言い訳をする。

「そう言わないで、何とか情報を入力してもらえませんか」
「若いメンバーに、示しがつかないので」

 こうお願いしても、「勘弁してよ」と言うばかり。他の部課長からは「遠慮せず指示すればいい」とアドバイスされるものの、なかなか強く言えない。そうこうしているうちに、互いに気まずい状況が続き、関係は悪化していく一方だった。

 どうすれば、元上司である年上部下との関係は改善するのか?

悩んでいるのは「だれのせい」?

 ベストセラー『「悩まない人」の考え方』から引用してみよう。

 悩みやすい人に共通している点は「思い込み」だという。「外部と内部」「出来事と解釈」「事実と感情」の切り分けができない人ほど悩みやすいとある。

 たしかに、悩みを生み出しているのは、だれのせいでもない。自分自身である。
 目の前の状況を「悩むべきこと」として解釈しなければ、そもそも悩みは生まれない。これを著者は事実の「感情化」と呼んでいるそうだ。

 それでは、この営業部長の悩みを深くしているのは、どのような理由があるからだろう? 3つの点から考えてみたい。

(1)感情が判断を曇らせる
(2)相手を変えようとしている
(3)出来事と解釈を混同している

 では、順に解説していこう。

(1)感情が判断を曇らせる

 過去に「この人には恩がある」という感情があると、それが現在の判断を狂わせる。「お世話になった」という気持ちが先立ち、本来なら当然求めるべき業務上の要求ができなくなってしまう。

(2)相手を変えようとしている

「相手に変わってほしい」という思いは、そもそも間違っている。年上であること、元上司であること、お世話になったこと――これらは変えようのない事実だ。そして、また現在、相手が自分の部下であることもまた、事実なのだ。

 まずは、この事実をしっかり受け止めよう。

(3)出来事と解釈を混同している

 先述した通り、年上の元上司が今は部下である。これは紛れもない事実だ。
 しかし「だから指示しづらい」というのは、その事実に対する解釈にすぎない。出来事と解釈を混同すると、悩みは深まるばかりだ。

 このようなときに有効なのは、リフレーミングだ。
 リフレーミングとは物事を別の枠組みで捉え直すこと。

 ピンチだと思い込んでいたのが、視点を変えることで実はチャンスだと捉え直すことはできる。
 お客様からの商品に対して問題提起されたとき「ピンチ」と受け止めるのか、それとも「チャンス」と捉えるのか。それはその人の解釈次第なのである。

 だから年上部下に対して「指示しづらい関係」ではなく「互いの経験を活かせる関係」と捉え直せば、悩みは解消されるだろう。

『「悩まない人」』の考え方にも、こう書かれてある。
「内部・解釈・感情」を変えるだけで、ゼロ秒で対処できる――と。

動じない「壁マネジャー」になってみよう!

 私がこのような相談を受けたら、「壁になったらどうですか?」と尋ねる。
 私どもは、壁のように動じないマネジャーを「壁マネジャー」と読んでいる。

 上司が「扉」だと思われると、部下はその扉を何とか開けようとするだろう。
 開かなければ、カギを探し始めるかもしれない。
 しかし、もし上司が「壁」と認識されたら、部下はもうあきらめるしかない。これまで通り進もうと思っても、別の道を探すしかない。

 このように上司と部下との関係は、意外と単純だ。

 相手が年下であろうが、年上だろうが、ベテランエリートだろうが、新入社員だろうが、態度を変えない。動じないことだ。変な思い込みをせず、平等に接するのだ。

 実際に、この営業部長は、年上部下と3回の面談を通じて納得してもらえた。
 もともと、その50代の元上司は、会社に対する貢献意欲が高い。実直で、誠実な人だった。キチンと向き合って話せば理解してもらえたのだ。

「そこまで言うなら、キチンとやるよ。気を遣ってくれてありがとう」
「いえいえ。とんでもないです。一緒にチームを盛り上げていきましょう!」

 ぶれない姿勢を貫くことで、むしろ相手は動き始めたのだ。

まとめ

 現代は、VUCAの時代(変化が激しく、先行きが不透明で、予測困難な時代)だ。
 これまでと同じような「解釈」をし続けていると、悩みを深くするばかりである。

 事実と感情を切り分け、出来事と解釈を区別する。そうすることで、すばやくリフレーミングできるようになるだろう。それが「悩まない人」に近づく第一歩である。

(本書は『「悩まない人」の考え方』に関する書き下ろし特別投稿です)

【執筆者プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント
最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。