知らないと絶対損する「税金対策」

 まず、「配偶者の税額軽減」ですね。これは、配偶者が相続した金額について、最低でも1億6000万円まで相続税がかからないという制度です。ご夫婦の間での相続には、こういった特例があるんですね。

 次に、「未成年者控除」という制度。これは、相続人が未成年である場合に使える制度で、18歳になるまでの年数×年10万円が相続税から差し引かれます。たとえば、相続人が8歳だったとすると、18歳まではあと10年ありますよね。10年×10万円=100万円分が、相続税額から直接引かれます。ここで大事なのは、「未成年者控除は税額控除である」ということです。

 たとえば、相続税の計算上、相続人が2人いて財産が5000万円の場合、相続税が80万円かかるケースがあります。でも、未成年者控除で100万円の控除があれば、相続税がまるごとゼロになるんです。さらに、「未成年者控除のプレゼント」という制度もあります。

 もし未成年者控除が、相続税額よりも多かった場合、その「余り分」を扶養義務者の相続税から引くことができるという仕組みです。たとえば、相続人が3人いて、うち1人が15歳の未成年。この未成年の控除が多すぎて引ききれなかったとき、その分をお母さんの相続税から差し引くことができます。

 この「扶養義務者」というのは、配偶者や直系血族、3親等内の親族で、実際に扶養しているかどうかは関係ありません。兄弟姉妹の間でも使えることが多いので、これはぜひ積極的に活用していきましょう。

 そしてもう一つ重要なのが、相続人全員の相続税が0円になれば、相続税の申告自体が不要になるということ。この制度をうまく使えば、手続きそのものがいらなくなる可能性もあるんです。

相続税を減らす「最適解」とは?

 これまでご紹介してきた制度を踏まえると、どういう分け方が相続税の負担を最も抑えられるか?

 答えはこうです。未成年者には、未成年者控除を使い切れるだけの財産を相続させる。残った財産はすべて配偶者が相続する。この形にすれば、配偶者の相続分が1億6000万円以下に収まっていれば、全員の相続税が0円になる可能性があるんですね。

 ただし注意点として、配偶者控除を使うためには相続税の申告が必要になります。申告書は提出しないとダメなので、そこだけは間違えないようにしましょう。

「極端に配偶者だけが多く相続する」のはやめましょう

 そして最後の注意点です。税金のことだけを考えると、「配偶者が多く相続したほうがいい」という判断になることがあります。でも、極端に配偶者だけが多く相続してしまうと、将来、子どもが大人になったときに――

「なんであのとき、あんなに偏った遺産分割になったの?」
「これはおかしい、無効だ!」

 このように訴えられる可能性があるんです。ですので、税金のことと法律のこと、両方のバランスをしっかり見ながら、専門家に確認を取りつつ進めていくのが大事です。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の著者による寄稿です)