野球の球拾いをするユニフォーム姿の男性たち写真はイメージです Photo:PIXTA

近代オリンピックでは、大会によって競技に含まれないこともある野球。しかし、日本においては、当初からオリンピックと野球は近い位置にあったという。大河ドラマ『いだてん』では、野球とオリンピックをつなぐ人物や出来事が数多く描かれた。作中に登場する、自由奔放なバンカラ集団「天狗倶楽部」のエピソードを通して、その意外な接点をたどる。※本稿は、中野 慧『文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

1984年のロサンゼルス五輪で
初めて野球が公開競技に

 2019年に放映されたNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック 噺~』は、戦前~戦後にかけて日本社会が「オリンピック」とどう向き合ってきたかをめぐる物語だった。本作は大河史上最低の平均視聴率8.2%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録した一方で、ヒットメーカーである宮藤官九郎が初めて大河の脚本を務めたこともあり、ドラマファンのあいだでは高い評価を得ている。

 『いだてん』前半は、日本最初のオリンピック選手である金栗四三(演:中村勘九郎)を中心に明治末期から昭和戦前期の日本体育界の様子が描かれ、後半は1964年東京オリンピック招致の中心人物だった田畑政治(演:阿部サダヲ)を主人公に、敗戦で意気消沈した日本が東京大会開催をきっかけに「復活」していくまでが描かれた。

 そして金栗・田畑とは別に、全編を通じたキーパーソンとして、大日本体育協会(現:日本スポーツ協会)初代会長、日本オリンピック委員会(JOC)初代委員長、そして講道館柔道の祖でもある嘉納治五郎(演・役所広司)の存在がクローズアップされていた。