NTTとNTTデータグループの本社NTTとNTTデータグループの本社。7月1日からブランドが統一する Photo by Reiji Murai、JIJI

NTTが5月8日、連結子会社のNTTデータグループを完全子会社化すると発表した。NTTドコモを完全子会社化してから4年半。NTT持ち株傘下で分離していた主要企業をすべて取り込む、グループ再編の最終形は、分割民営化前の「大NTT」を想起させる。水面下で何があったのか。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

グループ再編は“最終形”へ
海外事業を担うNTTデータの重要性

「NTTデータグループの事業はNTTグループの成長の原動力だ。目指す方向性をさらに推進していく」

 5月8日の記者会見で、NTTの島田明社長は、NTTデータグループ(G)を完全子会社化する狙いを説明した。

 NTTが保有するデータGの保有比率は約58%。6月19日までのTOB(株式公開買い付け)を経て約42%の株式を買い取る。投資総額は約2兆3700億円。2020年12月にNTTドコモを約4兆2500億円で完全子会社化したのに次ぐ巨額資金でデータGの経営権を完全に支配する。

 データGの完全子会社化の直接の伏線は、22年10月からグループの海外事業をデータG傘下に統合したことだ。これによりデータGは、NTTグループのグローバルソリューション事業の中心を担うことになった。だが、傘下の資本関係が複雑に入り組み、生成AI(人工知能)で盛り上がりを見せるデータセンターへの巨額投資に迅速な意思決定がしにくくなっていた。

 今回、データGの株式をすべて保有することで、こうした非効率を解消し、NTTグループ一体でデータセンター事業やITソリューション事業の海外展開を加速する。

 NTTは前身の日本電信電話公社が1985年に民営化して発足。公正競争を確保するため、88年にデータGを分社化(95年に上場)し、92年にドコモを分社(98年に上場)したのに続き、99年に持ち株会社のNTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)の4社に分割・再編成したが、それから20年超を経てNTTは再統合する。

 果たして、分割前の「大NTT」に回帰するまでに水面下で何があったのか。当初、完全子会社化に抵抗していたデータGが、それを受け入れるまでの経緯を見ると、NTTのグループ再編の狙いが浮き彫りになる。次ページで、グループ再編の最終形に至るまでの動きを明らかにする。