
NTTドコモがSBIホールディングスと進めていた住信SBIネット銀行の買収の交渉を断念したことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。ドコモは2025年3月期をめどに銀行業参入を目指していたが、これにより他社買収による「ドコモ銀行」の実現が難しくなったもようだ。ドコモが銀行に参入するのに、残された選択肢は何か。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
ドコモ悲願の銀行業参入に暗雲
有力候補との交渉決裂後の次の一手は?
「銀行は重要なピースで必要な機能」――。NTTドコモの前田義晃社長は、2024年6月に就任して以来、銀行業への参入の意向を繰り返し表明している。
スマートフォン市場の飽和で通信事業が頭打ちになったことで、通信大手各社は、金融・決済を中心とする非通信事業を強化しているところだ。ポイント経済圏の拡大によって、顧客の囲い込み競争が激化していることが背景にある。
ドコモの金融・決済サービスの中核はクレジットカード事業の「dカード」で、約1800万人の会員数を誇る。これに加えて24年1月にマネックス証券、同年3月にオリックス傘下の信販会社のオリックス・クレジット(今年4月よりドコモ・ファイナンスに社名変更予定)をそれぞれ子会社化して金融・決済サービスを強化した。
続く最大の課題が銀行業への参入だ。しかも、競合するKDDI、ソフトバンク、楽天グループはいずれも傘下に銀行を持っている。通信大手で唯一銀行事業を持たないドコモにとって、金融事業の中核となる銀行を獲得することはまさに悲願だ。
前田社長は24年度内をめどに「ドコモ銀行」の実現に道筋を立てるため、既存銀行の買収を有力な選択肢として交渉を進めてきた。ターゲットは、店舗や人員を抱える必要のないインターネット銀行で、複数の候補を検討。その中で、昨年から交渉を進めていたのが、住信SBIネット銀行の買収だった。
住信SBIは、SBIホールディングスと三井住友信託銀行がそれぞれ34.19%を出資しており、ネット銀行としては楽天銀行に次ぐ国内第2位の預金残高。ドコモにとっては申し分のない買収相手だ。
前田社長は、住信SBIの買収に向けて、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長らと協議を進めてきた。だが、交渉を知る関係者によると、すでに協議は決裂したという。
次ページでは、交渉決裂の経緯を示し、ドコモに残された銀行業参入の選択肢を明らかにする。