スロットで稼いで給油も?LA住民が3時間かけて通う“砂漠の激安スタンド”の正体【現地取材】「アグア・カリエンテ」ガソリンスタンドの外観

なぜこのスタンドだけ
極端に安いのか?

 砂漠地帯だからガソリン価格が安いわけではない。実際にアグア・カリエンテのスタンドから1キロほど先にある別のスタンドでは、1ガロン当たり4ドル60セントの価格設定で、LA市内とそれほど変わらない。

 ではなぜこのスタンドの価格だけ極端に安いのか?

「ここは我々インディアンが所有する土地だから」と言うのは、アグア・カリエンテのガソリンスタンドの守衛係の女性だ。 

 北米大陸に白人がやってくる前からこの地に長年住んでいた先住民たち。なぜ彼らの土地ではガソリン価格を安く設定できるのか?

 現在、合衆国政府が正式に承認しているネイティブ・アメリカンのトライブは全部で574ある。

スロットで稼いで給油も?LA住民が3時間かけて通う“砂漠の激安スタンド”の正体【現地取材】州旗の下には「アグア・カリエンテ・カフイラ」の旗が

 そのうちのひとつで「アグア・カリエンテ・カフイラ」という名のトライブが正式に所有する居留地に建てられたのが、このガソリンスタンドだ。

 ネイティブ・アメリカンのトライブは、米国の中にありながら、「ネイション」として認識されており、いわば独立国家のようなものだ。政府も警察も裁判所もそれぞれのトライブが独自に持ち、自治するケースが多い。

 よって、この居留地内で売られるガソリンに関しては、合衆国の「国」としての連邦税がかからないのだ。

 カリフォルニア州税はかかるが、連邦税を客にチャージしないで済むため、安い価格で提供できるというカラクリだ。

 人気ぶりに応じて、運営が工夫されている。安いガソリンを求めて24時間常に客が押し寄せてくるため、渋滞を避けるために、通常のスタンドと違って、一方向からしか車が入れない仕組みとなっている。

 大型トラックからハーレーダビッドソンの二輪車まで、さまざまな車種が給油待ちしており、10~15分以上待つのもザラだ。

 そして何と、このガソリンスタンドの中には、カジノが存在する。

 売店の横から奥に進むと、スロットマシンやビデオ・ポーカーのマシンが置いてあるコーナーがあり、21歳以上なら合法的にギャンブルをすることができる。

スロットで稼いで給油も?LA住民が3時間かけて通う“砂漠の激安スタンド”の正体【現地取材】ガソリン価格はLA市内と比べてガロン当たり1ドル50セント近く安い