いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

「他人と比べてしまう癖」が一発でやめられる“厳しい一言”とは?Photo: Adobe Stock

きれいで個性的な石探し

 小学生の息子は石が好きで、河原や海辺では延々と石探しをする。誕生日プレゼントには鉱石を要求するほどだ。

 なるほど、確かに石は面白い。

 遠目には全体的に灰色っぽく見えるが、探すとけっこういろいろな色、形がある。

 赤い石、緑色の石、金色のラインが入った石を見つけたりするとテンションが上がる。

 きれいな緑色の石を見つけて、「磨いたら宝石みたいになるかも」と私が言うと、息子は「磨かなくていいよ」と言う。

 そのままのほうが色味や形に味があっていいのだそうだ。

 ストア哲学者のマルクス・アウレリウスは、宝石をたとえにしながら「よい人間になれ」と言っている。みんなが同じ「よい人間」というわけではなく、宝石がそれぞれ固有の色を持っているように、個性を認めながらの「よい人間」である。

エメラルドのように

誰が何をしようと、何を言おうと、わたしはよい人間でなければならない。
金やエメラルドや紫は、絶えずこう口にしているであろう。
「誰が何をしようと、何を言おうと、わたしはエメラルドとして、わたしの色を守り続けねばならない」と。
それと同じだ。
(マルクス・アウレリウス『自省録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 たとえがエメラルドなのがいい。美しい緑色が浮かぶ。

 宝石の中でもダイヤモンドはとりわけありがたがられるが、だからといって、エメラルドはダイヤモンドをめざす必要はない。エメラルドにはエメラルドの魅力がある。その固有の色を輝かせるのが一番だ。

「わたしはわたし」という考え方

 SNSが発達したいま、完璧な誰かと自分を比べてしまう場面が増えた。他人との比較が癖になってしまっている人も多いだろう。

 でも、誰もが同じ輝きを持つ必要はない。エメラルドはエメラルドとして、赤い石は赤い石として、それぞれに色を持ち、そのままで価値がある。

 ストア哲学が教えてくれるのは、誰が何を言おうと「わたしはわたし」だとして自分の色を守る厳しい姿勢だ。

 同じ日々を過ごしていても、つい他人と比べて自分を責める人もいれば、「わたしはわたし」と、自分の色に目を向けて生きている人もいる。

 他人と比べるのではなく、自分の固有のよさに目を向けられる人のほうが、ずっと心穏やかに、自分を楽しんで生きていけるのではないだろうか。

 つい他人と比べてしまいそうになったときは、ぜひ「わたしはわたし」という一言を自分に投げかけてみてほしい

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)