原油輸入が3割減少した場合の
日本の実質GDPへの影響

原油備蓄の枯渇リスク軽減のため、ガソリン補助の見直しは急務、政府は“脱原油”を加速させよ

 日本の原油調達に、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による影響が明確に表れてきている。財務省の「貿易統計」によると、2026年4月の原油輸入量は、中東由来の輸入減を主因に前年同月比64%減少した。

 一方、米国由来は同39%増加しており、一部で代替調達の動きも生じたようだ。政府は米国を中心に調達先の切り替えが進み、5月は25年平均の約6割、6月は約7割以上の原油輸入を日量ベースで確保できると見込んでいる。

 こうした中でも国内の原油供給が安定しているのは、備蓄の放出により不足分が補われているためだ。だが、この対応は持続可能とは言い難い。仮に7月以降も25年平均の7割の輸入量が維持され、国内消費量が25年度並みで推移した場合、原油備蓄は27年4月ごろに枯渇すると見込まれる。

 米国とイランの協議は進展しつつあるものの、戦争終結の見通しは依然不透明だ。仮にホルムズ海峡の通航が自由化されても、周辺の石油施設の復旧には相応の時間を要する。さらに、日本に先んじて他の国・地域で備蓄が枯渇し、原油の“奪い合い”が過熱すれば、6月と同程度の輸入量を確保することすら難しくなりかねない。

 そうなれば、国内の備蓄は27年春よりも前に枯渇し、原油不足が日本経済を供給面から大きく押し下げるだろう。この場合、25年平均の7割程度の輸入量が維持されたとしても、原油への依存度が高い産業での減産が経済全体に波及し、実質GDP(国内総生産)は1.2%減少すると試算される。

 同時に原油価格が高騰し、日本以外の国・地域でも原油不足による減産が広がったり、日本製品への需要が落ち込んだりすれば、減少幅はさらに大きくなるだろう。

 このようなリスクを軽減するには、政府が自家用車の利用自粛の呼び掛けや在宅勤務の推奨など、原油需要の抑制に踏み込む必要がある。現在実施しているガソリンなどへの補助を早期に見直し、価格メカニズムを通じて需要を抑制することも重要だ。

 また、戦争が終結したとしても、原油の調達コストや国内の精製コストは高止まりの可能性が高い。エネルギーの安定供給の重要性が高まったからだ。

 中東産よりコストが高くても、調達先を分散する動きは定着するだろう。そうしたコスト増を緩和するためにも、政府は電源構成の見直しや省エネ化、GX(グリーントランスフォーメーション)など、“脱原油”に資する取り組みを加速させるべきだ。

(大和総研エコノミスト 田村統久)