円高予測が強まっている中、投資信託も為替ヘッジ付きにしようかと考えている人もいるのでは?実はそこにワナがあるのだ。投資信託の知識を深められる書籍『一番売れてる月刊マネー誌ザイが作った投資信託のワナ50&真実50改訂第2版』から、為替ヘッジ付き投資信託で損しないために知っておくべきポイントを解説する。

「利回り4%のはずがゼロ!?」為替ヘッジ付き投資信託で損しないために知るべきたった1つのことイラスト/橋本聡

為替ヘッジ付き投資信託は
円高を気にしなくて済むが金利差がコストになる

 先進国債券など海外の債券への投資は原則として外貨建てとなるため、為替リスクが発生する。投資先の通貨が投資した時点よりも円に対して上昇(円安)すればいいが、円に対して下落(円高)すれば、為替差損が生じてしまう。

 2024年までの数年は円安が続いていたが、戦後の日本経済発展の歴史は円高の歴史でもある。このため、一般に日本人は海外投資において円高による損失を恐れる傾向が強い。

 こうした不安を和らげてくれるのが、「為替ヘッジ付き(コストはかかるが為替の値動きの影響を概ね回避できる)」の投資信託。為替リスクを気にせず、債券の利回りを狙えるのだ。

 しかし、この為替ヘッジ付き投資信託にも問題がある。日本円と比べて、短期金利が高い通貨に対して為替ヘッジをする場合には、金利差分が為替ヘッジコストとしてかかる。つまり、金利差が大きい通貨ほどヘッジコストも大きくなるわけだ。

日本は金利ある世界に突入したものの
まだ日米の金利差は大きい

 最も人気なのは米ドル建て債券だが、2019年にはほとんどなかった日米金利差は5%以上に広がり、25年1月末現在では4%前後。つまり、ドル建て資産の為替ヘッジ型は、この金利差がヘッジコストになる。

 仮に4.0%の利回りが期待できる米国債券に投資しても、為替ヘッジをすると利回りはほぼゼロという計算になる。さらに、運用コストである信託報酬を加味すると利回りはマイナス、つまり「水没」してしまうのだ。

 主な先進国債券型の為替ヘッジ型の直近3年間の騰落率は大きくマイナスとなっている。

主な先進国債券型の為替ヘッジ型の利回りとコスト最終利回りから信託報酬を引いた利回りが為替ヘッジコストを下回っていたら要注意。1年間の騰落率は5本中4本がマイナスだった

 24年に日本はゼロ金利から脱出。米国は利下げムードがあるが、まだまだ金利差が大きい。

 このヘッジコストについては、ほとんどの投資信託が開示をしていないが、中にはちゃんと開示している投資信託もある。そうした投資信託を覚えておき、定期的に月次レポートで確認するといい。

 たとえば、米ドル建て資産の為替ヘッジコストは、「日本金融ハイブリッド証券オープン(年1回決算型)円ヘッジありコース」(SOMPOアセットマネジメント)の月次レポートに載っている。25年2月末時点の為替ヘッジコストは4.01%だ。

 ヘッジコストは、投資する通貨によって異なるので、米ドル建て以外の場合は、買付けた証券会社に問合わせてみよう。

※本稿は、ダイヤモンド・ザイ編集部編『一番売れてる月刊マネー誌ザイが作った 投資信託のワナ50&真実50改訂第2版』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。