この連載は、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の医師でもある伊藤明子先生によるものです。テレビなど多数のメディアに出演されている信頼度の高い人気の医師です。
本書の読者からは、
「子を持つ親として、食事の大切さがよくわかった」
「何度も読み返したい本!」

といった声がたくさん届いています。不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験によってわかった本当に子どもの体と脳によい食事。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。今回は子どもと一緒に料理をする重要性を解説します。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。

【小児科医が教える】「え、まじか…」親子で料理する家庭、しない家庭。想像以上に表れる「成長の差」とは?Photo: Adobe Stock

子どもが料理をすると、どんないいことがあるの?

 食事は手作りでなければいけないわけではありません。市販の惣菜を買ってきたり、冷凍品を活用したりしても、まったく問題はありません

 ただ、楽しく料理をする環境があるのは、よいことです。子ども自身が幼いころから料理に参加し、主体的に調理できるようになることは、生涯の健康作りにとても大きな意味があります。料理のスキルを獲得する過程で、賢く食べること、作ることが身につき、生きる力につながります。

 以下に子どもと料理することで得られるいいことをご紹介します。

① 子ども自身の野菜摂取量が増える[*1]

② 料理をする子のほうが、健康的な食材を選べるようになる[*2]

③ 料理を親と一緒にすることで、「自然に」「いつのまにか」算数(数える、分数計算等)、理科の力がつく。段取り力も身につき、語彙力も増える。[*3]

④ 親と一緒に料理をすることで、自分の健康のための判断(ヘルシーな判断)ができるようになる[*4]

⑤ 親と一緒に料理をすることで、自尊心・自信が育つ[*5]

⑥ 創造力(クリエイティビティ)を養える

⑦ 料理・調理は ライフスキル(生きる力)そのものを育む

⑧ コミュニケーションスキルの向上、ソーシャルスキルの向上[*6]
 発達に課題のある子にとって、ソーシャルスキルの養成はとても大切。そのひとつの介入方法として親と一緒に料理することが良いとわかっています。

家族の絆(ボンディング)が強化

 以上のように親子で料理することは良いことばかりなのです。
 混ぜるだけ、切るだけなど、かんたんなメニューでいいので、ぜひお子さんと一緒に台所に立ってみましょう。それだけで得することがたくさんありますよ。

作る時間もごはんの時間も楽しくなる! 飾り切りいろいろ

 ちょっと面倒かもしれませんが、ひと手間で一品が華やかになる飾り切りのご紹介です。子どもと一緒にやってみるのも◎。食卓が盛り上がりますよ。

【にんじんの型抜き】

作り方
3mm程度の薄さに切ったにんじんなどの野菜を市販の型で抜く。ステンレス製のタイプが失敗なくできておすすめ。子どもでも簡単にできる。

型抜きしたあとに、さらにナイフで各辺から中心点に向かって斜めに切ると立体的な飾り切りになる。

【小児科医が教える】「え、まじか…」親子で料理する家庭、しない家庭。想像以上に表れる「成長の差」とは?お子さんが好きなキャラクターの型を使っても

【レモンの蝶】

作り方
レモンを厚さ2mmくらいの輪切りにする。中心に向かって、半径を切り、切れ目をもって片方を手前に、もう片方を奥にひねる。種があれば適宜、取り除く。

【小児科医が教える】「え、まじか…」親子で料理する家庭、しない家庭。想像以上に表れる「成長の差」とは?デザートやお肉料理に添えるだけで華やかに!

【卵の飾り切り】

作り方
12分以上ゆでた固ゆで卵を使う。ペティナイフまたは彫刻刀で、卵の中心に向かって、Vの字のようにナイフを入れていく。細かい作業が好きなお子さんとチャレンジしても楽しい。

【小児科医が教える】「え、まじか…」親子で料理する家庭、しない家庭。想像以上に表れる「成長の差」とは?お弁当に入れると見栄えがアップ!

「台所育児」という言葉も流行っていますが気負わずに、まずは「ちぎる」「混ぜる」などの単純な料理から楽しくスタートしてみてくださいね。

(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本から一部抜粋・編集したものです)

*1]
Garcia, A. L., Brown, E., Goodale, T., McLachlan, M., & Parrett, A. (2020). A nursery-based cooking skills programme with parents and children reduced food fussiness and increased willingness to try vegetables: A quasi-experimental study. Nutrients, 12(9), 2623. https://doi.org/10.3390/nu12092623
• Chu, Y. L., Storey, K. E., & Veugelers, P. J. (2014). Involvement in meal preparation at home is associated with better diet quality among canadian children. Journal of Nutrition Education and Behavior, 46(4), 304–308 . https://doi.org/10.1016/j.jneb.2013.10.003

[*2]
Quelly, S. B. (2019). Helping with meal preparation and children’s dietary intake: A literature review. The Journal of School Nursing, 35(1), 51–60. https://doi.org/10.1177/1059840518781235

[*3]
Fernando, N. (2020, 11). 5 great reasons to cook with your kids. HealthyChildren.Org. https://www.healthychildren.org/English/healthy-living/nutrition/Pages/Cooking-WithYour-Children.aspx

[*4]
Asigbee, F. M., Davis, J. N., Markowitz, A. K., Landry, M. J., Vandyousefi, S., Ghaddar, R., Ranjit, N., Warren, J., & van den Berg, A. (2020). The association between child cooking involvement in food preparation and fruit and vegetable intake in a hispanic youth population. Current Developments in Nutrition, 4(4). https://doi.org/10.1093/cdn/nzaa028

[*5]
Dean, M., O’Kane, C., Issartel, J., McCloat, A., Mooney, E., Gaul, D., Wolfson, J. A., & Lavelle, F. (2021). Guidelines for designing age-appropriate cooking interventions for children: The development of evidence-based cooking skill recommendations for children, using a multidisciplinary approach. Appetite, 161 . https://doi.org/10.1016/j.appet.2021.105125

[*6]
https://www.lukincenter.com/5-social-emotional-and-cognitive-benefits-of-getting-kids-cooking-in-the-kitchen/#:~:text=Additionally%2C%20cooking%20gives%20kids%20an,and%20work%20well%20with%20others!