そんなふうだから、テレビの仕事はあんまり好きじゃないし、それにメーキャップとか髪の毛いじくったりするのも時間がかかってめんどくさいから、私はラジオの仕事のほうが好きだった。仕事というよりは遊びのつもりでやっていたみたい。

 仕事をやりながら、ボーイフレンドもいっぱいいたし、結婚しそうになったこともちょっとあるけれど、なんとなく結婚とは違うなあという感じがして、結婚のことを考えると先が真っ暗になってしまう。私は一生結婚できないタチだと思っていた。

 そんなときに今の夫が現れて、インスピレーションというのでしょうか、ほいと結婚してしまった。

 仕事も楽しいけど、結婚のほうがもっと楽しいような気がしたのだ。2年半たった今、そのころよりももっと楽しくなっている。だから私のインスピレーションはまちがいじゃなかった。

デタラメなレシピで作った
一度しか味わえない料理こそ芸術

 私は料理を作るのがとっても大好きで、人が食べて、「おいしい」と言ってくれるのが、いちばんの快楽。自分でデタラメに作って、それがおいしくできたときは最高にうれしくて最高に自信にあふれちゃうけれども、デタラメに作ったので、やり方の順序や材料や調味料の分量を忘れてしまって、1回こっきりしかできない。でもそれがほんとうの芸術なのかもしれないと、ひそかにほくそえんじゃうこともある。

 料理屋さんに行ったときに、おいしいものが出ると、

「どうやって作るんですか」

 ときいても、たいていはウフフと笑ってはっきり教えてくれない。

 そういうとき、よーしと思って自分で考えてやってみる。同じようにできるとざまあみろと思う。いちばんざまあみろだったのは、中国料理の「おこげ料理」で、これはご飯のおこげを油でからからに揚げたところに、豚肉やあわびなど10種類くらいの具を、鶏ガラのスープで煮て、かたくり粉でどろどろにしたのを、ジャッとかける。これはまったく料理屋さんよりうまくいって、エヘヘヘとなった。夫も喜んで友達をよんで、ごちそう大会をする。

 夫はいつもご飯どきになると、誰かをよぼうと言いだすので、私は困ってしまう。急に言われたって、材料が人数分ないし、用意も簡単にはできない。男って、そういうことがなかなかわからないものらしい。