シャンソン歌手になりたかったのに
売れない流行歌を歌わされた現実

 私はレコード歌手としては、シングル盤を4枚出した。ほんとうは私はレコードを出すのなら『枯葉』とか『愛の讃歌』みたいな、古いシャンソンで私の大好きな曲を吹き込みたかったのに、シャンソンじゃ売れないからといって4枚とも流行歌で、それも流行しない流行歌だったので、私は流行しない流行歌手だった。

 吹き込んだのは、最初が『誘惑のバイヨン』で、これは結構売れて公称10万枚。ほんとうは3万枚ほどらしい。これが私のいちばん売れたレコードで、次に出したのが『恋は気まぐれ』、その次が『明日の旅』、最後が『カモネギ音頭』。私はシャンソン歌手のつもりだったのに、『カモネギ音頭』はものすごく下品。『枯葉』とはあまりにも違うので、現実はきびしいと思った。

 今年になってから、突然、

「童謡を吹き込みませんか」

 という電話をもらった。

 それはあの『カモネギ音頭』のディレクターだった。童謡なんて小さいときに歌ったきりで、大きくなってから歌ったこともないし、もちろん吹き込んだこともない。

 でも童謡はふるさとのような気がして、とても興味があって、

「やります」

 と返事した。

 私が歌うのは『げんこつ山のたぬきさん』と『サッちゃん』とテレビの『アルプスの少女ハイジ』の主題歌『おしえて』の3曲で、童謡集のLPに入るものだった。私は童謡に縁がなかったので『サッちゃん』しか知らなかったが、テープをもらって練習した。

 練習しているときに中山千夏(編集部注/作家、歌手、俳優。1968年から8年間、日本テレビ『お昼のワイドショー』の司会を務めた)ちゃんが遊びに来た。私の歌ってるのを千夏ちゃんが聞いて、

「それじゃレミちゃん、シャンソンだよ」

 と言って見本に歌ってくれた。童謡はかわいく楽しく無邪気に歌うといいと言ってくれた。

 そのとおりにやると、なるほどほんとうにうまくいくのだ。千夏ちゃんは即席の先生だった。

立て続けにくる童謡の仕事
子どもができる予兆かも?

 レコーディングはまあまあうまくいったと思う。私が童謡を歌うなんて珍しいことだし、せっかく歌うのだから自分の子どもに聞かせてやったら最高だなと、ふと思った。それから考えたのは、もしかしたらほんとうに子どもができるかもしれないということだった。