「手に職をつけて、自分の力で食っていく」。そんなキャリア観が、AIの登場によって根底から揺らいでいる。あらゆる業務が一瞬で完了でき、誰もがコンテンツを無尽蔵に生み出せるようになった時代に、私たち人間はキャリアにおいてどのような生存戦略をとるべきなのだろうか。
AIを「思考や発想」に活用するための書籍『AIを使って考えるための全技術』の発売を記念して、起業家であり、「やりたいことが見つからない人」に向けてキャリア設計を説いた書籍『物語思考』の著者でもあるけんすう（古川健介）さんに「AI時代のキャリア戦略」について話を聞いた（ダイヤモンド社書籍編集局）。
Photo: Adobe Stock
人間の価値は「UI」として残る
――AI時代に「必要とされる人」って、どんな人だと思いますか？
前提として、これからの時代、人間の役割は「UI（ユーザーインターフェース）」かなって思ってます。要するに、AIと人間を繋ぐ媒介ですね。
けんすう（古川健介）
アル株式会社代表取締役
学生時代からインターネットサービスに携わり、2006年株式会社リクルートに入社。新規事業担当を経て、2009年に株式会社ロケットスタート（のちの株式会社nanapi）を創業。2014年にKDDIグループにジョインし、Supership株式会社取締役に就任。2018年から現職。会員制ビジネスメディア「アル開発室」において、ほぼ毎日記事を投稿中。
X：https://x.com/kensuu
note：https://kensuu.com
起点となる問いは人間がつくって、中身のコンテンツはAIに任せていい。でも、最後のアウトプットの段階では“人間性”が必要になってくると思っているからです。やっぱり人って、「AIが言っている」より「人間が言っている」方が聞く気になるじゃないですか。
だからAIの回答をもとに記事を作るときも、あえて自分の語り口で崩したり、個性がにじむようにしています。
最近、幻冬舎の箕輪さんと「ご神託ラジオ」という番組をやってるんです。フォロワーやリスナーからの悩みをAIに相談して、その回答をもとに僕と箕輪さんが理論を展開していくっていうもの。これもまさに「UI（ユーザーインターフェース）として人間が機能している」っていう例だと思ってます。
「顔の見えない人」は廃れていく
人間がUIとして機能する時代に強いのは、シンプルに「顔が売れてる人」です。
AIの力で誰もが“それなりに良いコンテンツ”を作れるようになりましたから、中身で差はつきにくい。そうなると問われるのが、「誰が言っているか」ということ。つまりみんなが知っていて、有名なUI（人間）からのアウトプットが支持されます。
なので、「匿名性」のある人は衰退していくと思ってます。少し前からSNSでビジネスノウハウを発信するイラストアイコンの人とか、Vtuberとか増えましたけど、正直どれも違いがわからないじゃないですか。
僕自身もSNSではイラストアイコンで活動してますけど、メディアでは顔を出してるから「個」として認知されて、差別化できてるんだと思います。
むしろ、これからは「顔が見える方が有利」になりそうだなと感じて、最近YouTubeも始めました。もはや、経営者の重要な仕事のひとつが「顔を売ること」なんじゃないかとさえ思ってます。実力や知識があるかどうかじゃなくて、「顔が売れてる人」が強いポジションを取れる時代になる。
「誰が言ったか」がすべての時代
実際、アメリカでは数年前から“顔が売れてる人”がビジネスでも成功してます。
『物語思考 ー「やりたいこと」が見つからなくて悩む人のキャリア設計術』けんすう（古川健介）著、260ページ、幻冬舎
たとえば、ユーチューバーがプロデュースしたスポーツドリンクが何百億円を売り上げたとか。そういうのを「コンテンツセントリック企業」と呼ぶようで、まずコンテンツとコミュニティをつくってから、プロダクトを出す。そういう流れが増えてきてます。
他にも、アメリカには「ブッククラブ」という文化があります。読んだ本をみんなで語り合う読書会ですね。今ではオンラインで世界規模になっているものもあって、そういうとこだと、元女優や著名人の発言が大きな影響力を持っています。
有名司会者のオプラ・ウィンフリーとか、「キューティ・ブロンド」などの映画で有名な女優のリース・ウィザースプーンとか。彼女たちがインスタに「この本良かったよ」と投稿するだけで2万部とか売れるらしいです。
実際、僕もビジネス書を紹介して、ネット書店で5000部とか売れたことがあります。だから結局、「誰がやっているか」「誰が言ってるか」がすべてなんです。
「この人が言うなら」と思われる存在になろう
極端な話をすると、堀江貴文さんが葬式ビジネスについての本を書いたら、たとえ専門外でも売れると思うんです。葬式業界の第一人者が書いた本よりも、です。専門家と堀江さんに2時間くらい対談してもらって、その内容をAIで膨らませる。内容の精度は監修で担保して、「堀江さんが言ってる」っていう体裁で出したほうが売れる。
だから、「顔が売れてる人」のところには、これから先も仕事が来続けます。
知識やノウハウを磨くことよりも、「この人が言うなら聞いてみたい」と思わせること。それが、AI時代では圧倒的に重要なんだと思います。
（本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』に関連したインタビュー記事です。書籍では、AIを使って問題解決するための56の方法を紹介しています）
■ダイヤモンド社の新刊
「最初の一歩を踏み出せない人には、この本が“AIとの対話”を始めるきっかけになると思います」
――ハヤカワ五味――
「思考や発想の技術を紹介した『考具』って本がめっちゃ好きなんですけど、まさにそれのAI版ですね。これも買います」
――けんすう（古川健介）――
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「深く考える」ためのAIの使い方!!
『AIを使って考えるための全技術 ―「最高の発想」を一瞬で生み出す56の技法』石井力重（著）、加藤昌治（監修）、682ページ
『AIを使って考えるための全技術』とは？
AIを、仕事の効率化や自動化に使うだけではもったいない。
頭のいい人は、AIを使って「能力以上の答え」を手に入れています。
「斬新な発想がほしい」
「ひと言のアイデアを膨らませたい」
「思考の弱点が知りたい」
「ビジネスの売上を予測したい」
「前例のない課題を解決したい」
「難易度の高い悩みを解決したい」
「ユーザーの本音を知りたい」
…などなど。
仕事も、日常も。あらゆる「考えること」に役立つAIの使い方を56個紹介。
この本が、あなたの人生から
「悩む時間」を消し去ります!!
本書の目次
序章 「AIを使って考える」とは？ ―チュートリアル
1部 すぐにアイデアがほしいとき
第1章 「AI特有の力」で考える
第2章 「自由な発想」で考える
第3章 「ロジカルな発想」で考える
2部 アイデアを磨きたいとき
第4章 考えを「発展」させる
第5章 考えを「具体的」にする
第6章 考えを「検証」する
3部 アイデアを実現したいとき
第7章 アイデアの「伝え方」を考える
第8章 アイデアの「実行策」を考える
4部 考えるヒントがほしいとき
第9章 「課題」を分析してヒントを得る
第10章 「悩み」を分析してヒントを得る
第11章 「人」を分析してヒントを得る
第12章 「未来」を予測してヒントを得る
最終章 「技法」を使いこなす ―ケーススタディ
