本能が判断する“いい顔”は
重要な道しるべになる

 そしてある程度の人数のデータを溜め込んだところで、竹原さん本人にアプローチしました。快く面会に応じてくれた竹原さんに、これまで話を聞いた転身者の一覧表を見てもらうと、彼は少し驚いたような顔で興味を示してくれました。

 サラリーマンから、そば打ち職人、美容師、社会保険労務士、落語家などなどに転身した30人程度の事例を見ながら竹原さんは、「これは、商売になりますよ」と言ってくれました。転身者の取材に没頭してきた私には本当に力強い発言でした。

 その言葉を励みに、会社に在籍しながらさらに取材を続けたことから、執筆や講演を本業とする著述関係の仕事にたどり着いたわけです。

 たまたま新聞で目にした“いい顔”の竹原さんに救われたと言っても過言ではありません。もちろん、同じ人物の顔に対して、好感を持つ人もいれば嫌悪感も持つ人もいるでしょう。しかし、自分が“いい顔”だと感じる人の向こう側には、自身との相性があり、自らの未来の可能性を体現している場合もあると考えています。

 “いい顔”であるかどうかというアンテナを、人はもっと重視すべきなのではないか。東京で地下鉄に乗ると、特にラッシュアワーの時間帯には、どこか不機嫌そうな顔をしたビジネスパーソンがひしめいています。

 その理由も気持ちもわからないではありませんが、戦争などの命や身体の危険もなく、自由に発言もできる日本において、働いている会社員はもっと楽しく過ごすことができる、すなわち、もっと“いい顔”になれるはずだと思えてなりません。

「顔」に注目することで、未来の自分に対して好影響を与えてくれる人物が見つかるかもしれません。職場や趣味の場でも、これを少し意識してみてはいかがでしょうか。“いい顔”は、自分の可能性を切り開いてくれる指針になることがあると思っています。

(構成/フリーライター 友清 哲)