
AI時代に急増するデータセンター(DC)需要にどう対応して、日本のデジタル競争力を高めるか。東京・大阪集中から地方分散へインフラを再編し、脱炭素電力の活用を促し、地域経済の活性化につなげる「ワット・ビット連携」構想を提言してきた三菱総合研究所(MRI)の政策・経済センター フェロー、西角直樹氏にその概要や具体策を聞いた。前編・後編の連載でお届けする。(聞き手/ダイヤモンド社論説委員 大坪 亮、文/ライター 奥田由意、撮影/瀧本 清)
生成AIの普及で
データセンターと電力の需要が増大
――日本におけるデータセンター(DC)の需要と供給をどう考えたらいいでしょうか。
生成AIのための膨大な計算資源を国内に準備する必要に迫られ、DCに対する需要が急増しています。米国のアマゾンやグーグルといったビッグテック各社は、日本国内でのAI用DCへの大規模投資を明らかにしています。マイクロソフトも2029年までに日本国内に約100億ドルを投資すると発表しました。国内の通信事業者やDC事業者も補助金を受けながら投資を拡大させている。現在起きているDC投資ブームは、生成AIが引き金となっています。
――なぜ生成AIがそれほどのDC需要を生み出すのでしょうか。
まず、生成AIそのものが急激に巨大化しているからです。計算量は、AIの基盤モデルの高度化に概ね比例して増加しています。また、モデルの高度化だけでなく、生成AIの普及によって、利用者数と一人当たりの利用回数も増え続けていますから、「モデルの高度化×利用者数の増加×利用頻度の増加」という掛け算で、計算量が急増しているのです。
さらに、AIの使われ方も変化しています。現在の高機能な生成AIに質問を投げると、問いを分解したり繰り返し処理したりするリーズニング(論理的思考・推論)と呼ばれる計算を行います。同じモデルを繰り返し使用することを意味し、それだけ計算量が増大します。
今後は、AIエージェントやフィジカルAIへと応用領域が広がっていきます。自動車の自動運転、介護ロボット、工場の無人化などの領域でAIが本格的に普及すれば、計算資源の需要は膨大な規模になります。
――それに伴って、電力需要も増えているようです。
AIと電力需要の関係は、「計算量の増大」だけでなく、「電力効率の向上」を併せて考える必要があります。GPU(画像処理半導体)など最先端の計算チップの電力効率は、2年で2倍~3倍のペースで向上していく可能性があります。2010年代にDCの電力消費があまり増えなかったのは、計算量の増加と電力効率の向上がほぼ同じペースで起こっていたからです。
しかし、生成AIの登場でそのバランスが崩れ、計算量の増加が電力効率の向上を大きく上回ってきました。これが今日の電力需要急増の本質です。
私たち三菱総合研究所(MRI)の試算では、2040年の国内DCとネットワークを合わせたICT電力消費は最大5480億キロワット時(2020年比の27倍)に達する可能性がある一方、省電力化を考慮したシナリオでは560億~1700億キロワット時(3〜9倍)程度に抑えられるとも見ています。予測の幅が大きいのは、半導体技術の発展とAIの使われ方の組み合わせ次第で、結果が大きく変わるからです。







